観光庁が訪日インバウンド市場復活に向けて打ち出しているのが「高付加価値化」。
海外からきて高額消費をしてくれる富裕層のことを「高付加価値旅行者」と位置づけて誘客をしていきましょうという取り組みです。
観光庁の説明によると、高付加価値旅行者(着地消費100万円以上/人の訪日外国人旅行者)は、コロナ前には訪日外国人旅行者全体約3000万人のうちの約1%(29万人)に過ぎなかったものの、消費額(約4.8兆円)の約11.5%(5,523億)を占める上得意さま。ただし、大都市圏での買物消費等が多く、地方での消費が少ないことから、これからは地方への誘客を促進することにより、地方創生へ貢献することが期待されるということで、特に地方で頑張ってこの人たちを集めようという動きを加速しているということです。
う~ん、「高付加価値旅行者」という謎の言葉に「付加価値の高い旅行者とは貴族とかのこと?なぜそのネーミング?」「素直に海外富裕層とか、高額消費旅行者でいいんじゃない?」などと反応してしまい、思考が停止しそうなところではありますが(笑)、はたして地方でこれを実現できるのか?
という書き出しで以前原稿を作っていたのですが、なんだか筆が進まず放置していました。
それから数ヶ月、事態はそれ以上のスピードで進んでいるようなので書き直してみます。
ニュースではすでに「3月には月間で180万人の訪日外国人が来た」「爆買い復活!」「今年は2000万人まで回復」という声が聞こえてくるようになりましたが、4月に入り東京駅、羽田空港での外国人比率はさらに高まり、失礼ながら私の住んでいる小田原でさえ、駅の周辺には外国人団体が小田原城や箱根を目指して集まってきています。そして4月末になり、東京駅にも羽田空港にもその集まりの中についに中国語が混じり始めました。
地域にはもう間もなく外国人旅行者が向かい始めます。
「高付加価値化」の準備をしている場合ではなくなりそうです。
ハコモノをつくるには時間が足りませんし、宿泊施設では通常営業のための人材ですら不足していて、客室が開いているのに掃除の手が回らず、売ることができないという状況ですから、新しい付加価値サービスに回すようなリソースもありません。
ということでおそらく地域の現場ですぐにやるべきことは「高付加価値化」ではなく、「受け入れ体制整備」をもう一度整えるところから急いでやり直し。
でも大丈夫、
日本のいいところは
・最低限の施設が整っている
・キチンとした仕事ができる
・ホスピタリティーにあふれている
という基本的な「付加価値」を持っていますから、あわてる必要はありません。
今、やっておくべきことは「価格再設定」
今や世界に名だたる「安すぎる国 ニッポン」ですから。。。。
私の見立てでは、これから先しばらくは価格を世界レベルに合わせて利益を確保して、次への設備投資やいい人材を確保できる企業体力をつけられる絶好の時期となっていくのではないかと思います。
価格設定の目安は「ビッグマック指数」https://www.economist.com/big-mac-index
日本のビッグマックの価格と世界の国々の価格を比較した経済指標なのですが、
たとえば、2023年1月に
ビッグマック価格 日本410円に対して(4/27のレートで計算してみると)
スイス1005円(2.45倍) イギリス630円(1.53倍) アメリカ715円(1.74倍)
シンガポール590円(1.43倍) 中国463円(1.13倍)
という事実があります。
つまり、ここまでのお金だったら気軽に買えるという目安としていけばいいかと思います。
ざっくり決めるとすれば、シンガポールあたりをベンチマークしておくといいでしょう。そのあたりであれば現在販売している価格の1.4倍程度まで上げたとしても「高い」とは言われません。欧米の方はそれ以上でも大丈夫っぽいです。
つまり、同じ商品やサービスを扱っていても40%以上利益率を上げられるタイミングなのです。
テレビ番組ではまだまだ日本の物価の安さを称賛したり、我慢して値上げをしない人たちをほめたたえたりしてますが、それはそれでおいといて、外国人受け入れを考えているところはこのタイミングでしっかりと利益を残せる体制を整えましょう。
そのときにはクレジット決済がマストです。
現金決済は卒業しましょう。
日本人が買ってくれなくなると心配して値上げできない場合には
外国人ターゲットのスペシャル商品を用意してそこに集中して多言語表記のプロモーションを仕掛けましょう。せっかくの海外旅行ですから一押し商品を買いたくなるのは日本人も外国人も同じです。
「高付加価値化」はそのあとでね。