JNTOの訪日外客数(2024年7月推計値)によると、7月の訪日外客数は、3,292,500人となり、前年同月比では41.9%増、2019年同月比では10.1%増となった。2019年同月の2,991,189人を約30万人上回り、2か月連続で単月として過去最高を記録した。 また、7月までの累計では21,069,900人となり、過去最速で2,000万人を突破した。ということで、ますますインバウンド市場は拡大中。今年はおそらく過去最高の3500万人~3600万人となることでしょう。
この一年間の弊社の業務にもインバウンドの波は来ておりまして、外国人向けの観光コンテンツ開発のお手伝いをしたり、インバウンドセミナーで体験コンテンツ開発方法のお話をさせていただいたりしております。その中で少し悩ましいのが、インバウンドツアーのコンテンツ開発支援をする中でどうしても増えてくる翻訳の仕事。ツアー募集告知、プロモーション、観光案内、観光マップ、旅のしおり等、ツアーのイメージはできたものの、それを翻訳して具体的に伝えていくために、日本語で作った既存の観光ホームページや観光パンフ、以前翻訳されたホームページ等を参照しながら、翻訳指示を行います。
●そこで困ってしまう件
・これまで翻訳したデータがアーカイヴされていない
・いろいろなところにいろいろな表現で翻訳されている
・翻訳を発注する側が語学に堪能ではないため、翻訳で上がってきたものをチェックできない
・翻訳に出す元データが古くから使っている観光情報のため、直訳されると意味が分からなくなる
などなど、昔からなかなかうまくできないんですよね~。なんとか今の世代にもわかりやすくて、訪日外国人観光客にも理解できるような翻訳文章はできないものか?といつもぶち当たる壁がそこにあります。
AIの時代がそこまで来ているので解決してくれるかなと思いつつ、いろいろ試してはいるものの、かえって問題は大きくなっているような気がしています。
●今、感じている課題
・この1年だけでもAIが一気に進化して自動翻訳機能もかなり向上しました。でも、一文一文はおおむね間違っていなさそうなのですが、長い文章になるとなんだかおかしい。
・もともと人格がないAIですから、いろいろな人がバラバラに書いたものが集まって文章が構成されている違和感を感じる。
・基本、直訳なので日本の歴史や地名とか入るとまだまだ。
・日本のことを知らない外国人が読むには背景となる情報が必要だが、外国人向けにまとめてはいない
便利だし、お金も時間もかからないといって、自動翻訳を使って資料を作成してしまっているケースが増えているし、地域の観光ホームページもボタン一つで翻訳してくれるGoogle翻訳を使っているケースが増えていますが、その場限りで見るだけならいいですが、残念ながらその翻訳を使って販促ツールやツアー販売のためのデータとして利用できるレベルではありません。
英語や中国語の文章をAI翻訳にかけて、日本語に翻訳した文章を読んでみると、だいたいの意味は分かるけど、日本語としては違和感が残るという経験はみなさんもお持ちでしょう。それと同じことです。
まあ、詳しく知りたければ調べる方法もたくさんあるし、写真や映像のほうがよほどわかりやすいわけなので、ざっくりわかればいいといえばいいのですが、少なくとも地理や歴史にかかわることくらいはその地域を正しく伝えるために外国人がしっかりと理解できるものを用意すべきと考えます。
ただ、そこには根本的な課題があるのです。
残念なことに元の観光情報が「古い日本語」でできているために今の日本人でもよく理解できないし、ましてや外国人には理解が不可能ということです。その古くて難しい情報を元データとして翻訳しているためによりわからなくなるし、誰も翻訳後のチェックができていない。気がつけば「おもしろ外国語看板」みたいな扱いになりかねません。もちろん、販売につながること、契約につながることは正しく表現しなければなりませんので商売に使うには慎重になるべきかと思います。
ここからがビジネスチャンス。
せっかくAIがここまで賢くなりつつあるわけですから、ちゃんとデータ整備して「AIに食わせてあげる」ことにより、正しい情報、わかりやすい情報として発信できるようになるようにやり直すことを提案します。AIも賢くなってはいるのですが、もともとのデータが古かったり、説明が少なかったり、写真がなかったりして情報量が少ないと信頼できるかどうかの判断がつかないためにデータとして取り込んでもらえなくなります。大都市圏は流動人口も多く、観光客も大きく動いている分、観光地の情報もそれなりのボリュームがあるし、そこに言った経験をもとにたくさんのレビューがSNSにあふれていますが、地方となると自治体が作った古い情報と少しだけのレビューしかないので参照できる情報量が圧倒的に少ないということなのです。ということで、これからの地域観光を振興させていくためにはまずはAIにできるだけアップデートな情報を食べさせてあげるところから始めなければ、無視されてしまうと思った方がいいです。ということで、AIを正しくしつけてあげるためにも言語表現に世代交代が必要だということなのです。
具体的には以下のようなアップデートが必要かと思います。
・昭和初期に書かれてそのままになっている旧所名跡の看板、施設案内のしおり等、デジタル化させていないものをすべてデジタル化して書き直す。
・歴史にかかわるストーリーも現代文として書き起こして、若者でも外国人でも理解できる資料に再編集する。
・写真も映像も撮りなおして、デジタルアーカイヴとして保存する。
地域の観光データベースの再整備はAIの時代に必須。
それをきっかけにアップデートした基本情報については多言語翻訳もしっかり丁寧にやるべき。
そうすると地名、固有名詞の名称、よみがなを間違えられないし、固い表現がなくなる、方言とかの表現で困らない、元号とか旧暦とかでも混乱しないで済みます。できればさらに意訳(トランスクリエイション)を行うことにより、より身近な言葉でわりやすく、初めて来訪された方にも地域を理解してもらいやすいものに変換してもらいたいものです。3年前にトランスクリエイション(トランスクリエイション⇒観光をアップデート)についての記事を書きましたが、そのときにはインバウンドのためにも書き直しが必要だということをお伝えしました。しかしながら、わずか3年の間のAIの進化により、その必要性は何倍にも増していると思います。
これを全国で展開するとなると相当なお金が動くはず。
AIにいいエサをあげて、正しい成長をさせることが観光客との相互理解につながるというお話でした。