高付加価値な「食」の観光コンテンツ作りに少しヒントが見えた

アフターコロナでインバウンドが急回復から急増へとどんどんドライブしている中、観光庁主導で「高付加価値」「海外富裕層」「特別体験」というキーワードで全国において商品開発が進んでいます。東京のようなすごいレストランやホテルがあるわけでもない普通の地域においてはこれまで聞いたことも見たこともないし、興味を持ったこともない(笑)、このキーワードにそれでも大きなチャンスを感じて取り組みを始めています。

でもいきなり、こんなところでつまずいているケースをよく目にします。

<うまくいっていないケース>
・当然ながら、自らが「富裕層」ではない方々が富裕層に対するサービスを考えている。
・今あるものを単に値段を高くすることが目的になっている
・提供する商品は高額でも、サービスを提供するスタッフが高品質なサービスを理解していない
・観光事業として商品・サービスは提供しているが、付加価値を演出できていない
・海外富裕層というざっくりとしたセクセメントに対して事前マーケティングにコストをかけていない

わからないことばかりです。。。

世界中の旅行者の中でも日常において、目の前にはいない、ごくごく限られた人たちにアプローチするわけですから「できない、できていない」が当たり前なのでしょうが、それはそれで取り組んでみることで見えてくることもあります。

今年はたまたま静岡と新潟の観光コンテンツについて関わらせていただいておりまして、そのふたつのエリアの共通点から見えてきたものを少しメモしておきます。

「お茶」と「お米」

それぞれ食の素材の産地として、それをメインに観光の打ち出しを行っているところはよく似ています。
当然ながら、静岡に行けば食堂で食べるときに出るお茶がうまい。新潟ではごはんのおいしくない店はない。
このすばらしいインフラこそが地域の宝であることは間違いありません。

しかしながら、「みんなおいしい」「どこでもまちがいない」ということはいずれも日常における「最低レベルがとても高い」のですが、日常においてはそれを1000円出せば満足できるのが当たり前。反面そのことは「そこに特別感や非日常感はない」ということになってしまいます。さらにいえば、近年では日本全国どこでも最低のレベルがすごく高いので、その差がわかる人はとても少ないのです。

ですから、日常が素晴らしすぎるがゆえに、満足度が高すぎる「お茶」と「お米」だけでは残念ながら「旅行目的」にはならない、「わざわざ行きたくなる」理由にはならないというわけです。では、どうすればそこに価値を見出し、新潟へ静岡へ来ていただけるか?ここを考えることが全国的に大事かな?と思った次第です。お茶とお米だけでなく、豆もかぼちゃもイチゴもトマトも日本の食材は本当においしいからこその悩みでもありますね。

それであれこれと取り組みを見てきた中での
富裕層に満足いただける付加価値づけのポイントとは?

1.素材をさらにおいしく食べさせてくれる「人」・・・料理人、生産者

2.素材をさらにおいしくいただける「場」・・・非日常空間、その地域、その場

3.素材をさらにおいしくいただくまでの「ストーリー」・・・語り、演出、コミュニケーション

この3つかなと。
すべてがそろう必要はないかと思うのですが、そのひとつひとつが旅行者にとって「記憶に残るもの」になる演出であることは間違いないと思います。

これまでは素材のよさを強調するがばかりに素材をいじることをしてきませんでした。そのため「なぜおいしいのか」「どうしてそうなったのか」「どうすればもっとおいしくなるのか」を伝えることができていなかったというわけです。それらを「人」「場」「ストーリー」という演出を加えることにより、よりおいしく召し上がっていただき、一生の思い出として持ち帰っていただくということが必要ではないかということです。

そしてもうひとつ。
欲を言えばこれらの要素に「フィジカルな体験」が加われば間違いなし!
参加者が自らの手や身体を動かす体験を加えることでその「おいしくいただくストーリー」の中に入り込むことができればもっともっと満足度は高まることでしょう。産地を見に行くだけでもいいですし、収穫体験もよし、実際に何かを作ってみるのもよし、自分で焼いて食べるのもよし。。。自らが動いた記憶はいつまでも記憶に残ります。お土産話にもしやすいですよね。

これらすべてが整った環境で食べる「お米」や「お茶」はどんなにおいしいものなんでしょうね。
それをいただくために新潟や静岡に来ていただける、それをいただくことが旅行目的になる、そんな付加価値づけこそが富裕層に受け入られるのではないか?目の前でおいしいごはん、おいしいお酒を楽しんでいるインバウンドのみなさんを見ながらそんなことを考えた夏でした。

日本の食は本当に素晴らしい。地域にはまだまだビジネスの可能性がありますね。