日本の着地型体験観光では常に上位にランクされる陶芸体験。
1泊2日でいそがしく旅行する日本人が陶芸体験に割ける時間はわずか1時間程度が限界。茶碗や湯呑を作ったり、素焼きの上に絵付けをしたりできる体験ですが、完成を待たずに出発して、出来上がった作品を窯で焼いて後日自宅に届けてくれるというのが流れです。旅ナカで出会った素敵な陶芸作品に触発されて、自分でも作ってみたいという気持ちはよくわかりますし、自宅に送っていただいた作品は旅の思い出としてずっと残りますから、とてもいい体験だと思います。
ただ、着地体験のポータルサイトはコロナ禍を経たのち急成長中なのですが、全国統一的な「陶芸体験に特化したポータル」はまだないようです。
陶芸教室のポータルを作りたい。全国に自分の師匠がたくさんできると楽しいだろうなぁ~ 7/100 という記事を2022年7月に書きました。
あらためていろいろと検索をしてみますと、このマーケットは陶芸体験・陶芸教室でふたつに分かれていることを知りました。陶芸体験はおもに陶器の産地で窯元が地元の土、本格的な窯を使って観光客向けに簡単なアドバイスだけで「ちょっと体験」を低単価で提供するもの。陶芸教室はおもに都市部で趣味の講座としてプロの先生の指導により「陶芸の技術」を身につける主に会員制の教室であること。つまり、陶芸教室には1日体験で集客を行い、初心者から上級者まで継続して教えてもらえる仕組みがあります。一方、観光地の陶芸体験には時間的な制約もあり、そこまで用意されていないということになります。別物なんですね。
ですから、以前の記事で「地域に師匠がほしい」というのは簡単ですが、陶器の産地の窯元は陶器を作る技術は持っているが、教えるノウハウを持っているかどうかがその実現を大きく左右するということが見えてきました。事業継続のため、後継者育成のためにそこで働く人材を育成するならば、窯元も日常の作業の流れの中で教えられるのでしょうが、たまに都市部から陶芸を学びにやってくる観光客のために教える技術を身につけたり、教室のように時間を決めて教えたりする余力はなかなかなさそうです。となると観光地での「体験」レベルで「師匠」的なお付き合いを求めるには無理があることがわかりました。
それでも「全国に陶芸の師匠を持ちたい」という願望をかなえるとするならば、観光地の「体験」にも、
・製作する作品に初級・中級・上級コースを設定
・体験時間もレベルに合わせて伸ばす
・直接指導の時間をしっかりと作る
・中級・上級の体験価格をそれなりに引き上げる
ような工夫をして、リピーターがつくような体験事業として収益化をめざしていただけると可能性が出てくるような気がします。リピーターがつくと一見さんの観光客の売り上げでなく、窯の作品や陶器も併せて販売できるようになるという好循環も期待できるのではないでしょうか?
そうなると都市型の陶芸教室と観光地の陶芸体験のプログラムが近づくのでポータルサイトも作りやすくなるのになぁと思う次第です。この話は陶芸だけでなく、いろいろな「観光地の体験」にも通じるのではないでしょうか?
先日出会ったマリンスポーツの体験事業を行っている方に、私から「全国に師匠が欲しい」という話をした時、これまでは観光客=初心者と思っていて、リピーターを満足されるためのレッスンやプログラムを提供していなかったという言葉を聞きました。
大都市圏で趣味の陶芸教室に通う人が全国の窯元に出向いて修行するという絵はやっぱり見てみたいものですね。