お店を訪ねると町がわかるサイクリング 125/100

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今、インバウンド外国人に人気なのが何気ない田舎をガイドさんが案内して、自然の美しさとそこに住む人たちとの出会いを演出するタイプのサイクリングツアー。もちろん、しまなみ海道のように本格的なバイクで走り抜けるサイクリングもあるのですが、それはどちらかというとガチサイクリングのほうです。

昨年度、いくつかのインバウンドサイクリングツアーを企画したのですが、自然のおおらかさやその土地でないと出会えない風景、日本人には日常すぎて気がつかない、海外にはない景色など、知られている観光地ではなくても、ついつい自転車を降りて写真を撮ったり、眺めたりする場面はたくさんあるということがわかりました。

車で旅する以上に見える景色が身近で面白いし、簡単に止まることができる。
時速10~15kmで見ることができる情報量がとても多いということを実感しました。

そこで気がついたのは、点在する観光ガイドブックに載っているスポットを訪ねる旅はマイカーやバスで旅するための本であること。当たり前といえば当たり前ですが。歩くためには歩くためのガイドブック、自転車には自転車のためのガイドブックが必要なんですね。(売れるかどうかは別(笑))

そして、もうひとつ。
マイカーやバスでは通過してしまうようなお店に立ち寄ることができるのが実におもしろいということ。
地域ではモータリゼーションが発展するとともに大型店舗が郊外に進出し、路駐ができなくなり、駐車場も少ない駅前の商店街はどんどん寂しくなってしまいました。でも、それでも駅前で頑張って商売を続けているお店がありますよね。

人通りも少ない、観光客も訪れない商店街がなぜ消滅しないのか?

私は、地域経済はBtoBとギフトで成り立っているからじゃないかと思っています。
地方の駅前のお店は高齢経営者の方が多く、当然デジタルとかDXとかは縁遠く、古くからのなじみのお客さんのギフト需要、運動会やイベントへの卸販売、企業への販売がメインですから、パッと見、来店客がほとんどいなくても経営が成り立っているケースが多いです。

「だから」といっては失礼ですが、サイクリングの途中でお店に立ち寄らせていただくと結構ご歓待いただけます(笑)そして、ここからが重要なポイント。駅前商店街の歴史あるお店のみなさんはやはり商売人なのでお話が上手で、ノリがいいんです。そうしているうちにお店の人の興味はお客さんの方に移り、「どこからきたの?」「日本でどこがよかった?」「なにがおいしかった?」とどんどん広がる。もはや自分のお店の商品の話だけでなく、自分が旅先にいるかのような話になっていくのです(笑)。そんなこんなで、日本人であろうと外国人であろうととても楽しいコミュニケーションの時間がもてるのです。

そして、当然ながら、盛り上がれば盛り上がるほど、商品も売れます。

そう、旅の楽しみは知らない土地で知らない人と出会うこと。車だと出会えない旅がそこにあるのです。

サイクリングツアーだからこそ立ち寄れる駅前の和菓子屋さん、酒屋さん、喫茶店。そして、商店街から少し離れた老舗のケーキ屋さん、酒蔵、醤油蔵。そんなお店を訪ねていくサイクリングツアーをもっと作ってそれぞれのお店の集客に貢献できるといいですね。

車に乗っていては気がつかない古くて、そして、おもしろいお店訪問が新しい観光スポットとして人気になりますように。