通年観光=地域の日常を旅する新しいカタチ 58/100

新規事業100

最近、いろいろな場面で「通年観光」という言葉をききます。
反対語は「イベント観光」。
地域の自治体が観光人口を増やすためにわかりやすくカウントできるのが「祭り」「イベント」等の一過性であり、かつ場所が特定できるもの。
観光庁のルールによると年間の入込客数が1万人以上の観光地を観光地点として選定し、全観光地点の入込客数情報を収集し、入込客数合計を求めるのですが、同一の観光客が複数の観光地点を訪れたケースでも重複してカウントした「延べ入込客数」となっています。
ですから、大きなイベントで短期的に集客ができれば派生して周辺観光スポットにも人が動くので観光入り込み客数は大きく見えたります。なにごともわかりやすい数字の成果があると議会での説得力も増しますし、予算もつきやすい。地域観光はこの繰り返しでこれまでやってきました。
しかしながら、年間に数日のイベントのために大きな額の税金を投入するだけの余裕がなくなった今、年間を通じて観光客が集まる方法はないものかと考え始めた、のではないかと思います。

一年中お客様が絶えない強力な観光スポットがあれば、それはそれで通年観光が成り立つと思うのですか、強力な観光スポットがなかったり、自然景観だけで観光収入が入ってこなかったり、観光スポットに頼りきりのままでは通年観光は実現しなさそうです。

じゃあ、通年観光って具体的にはどんなことなのか?と今、議論が始まったところではないかと思います。

私の思う通年観光は旅行者が町の営みに参加すること。
ordinary = everyday life
これまでは観光スポットや施設、イベントに一時的に外からの「お客様」をお迎えする人数を求め、観光推進を行ってきましたが、通年観光では年中どこかしらに旅行者が滞在している姿と考えますと、地域の日常の中に旅行者が存在しているということになるのかと思います。
日常の街の営みの中の旅行者はお客様ではなく、ホストとゲストの関係性、つまり対等な立場で語り合い、食事をして過ごすカジュアルな関係性によって実現できるものではないかと思います。

旅行者はその土地に興味を持ち、その土地の生活に触れてみたいと思う。
たとえば、春先、山菜がとれる季節には地域の人と一緒に山に入り山菜取りをして、その足で一緒に山菜の天ぷらを作り、ビールをあおる。
たとえば、その土地の陶芸職人に一週間弟子入りし、食器のフルセットを作り上げる。一か月後に焼きあがったら、陶芸の師匠とともにその食器を使ってディナーをいただく。
たとえば、移住してオープンしたカフェオーナーに最高のコーヒーの点てかたを教わりつつ、移住について、暮らしについてコーヒーをいただきながら語らう。

基本的に地域の人たちは日常の仕事の延長線上で旅行者を受け入れ、仕事を知ってもらったり、体験してもらったりすればよい。提供する価値は地域のこと、仕事のことを日常のままで話し、伝え、地域のことを知っていただくこと。

日常の積み重ねであれば、まわりのみんなを集めてわいわいがやがやと議論するだけでもたくさんのできることを思い浮かぶはず。
新しい施設や新しいイベントは基本的に必要ない。

これをビジネスにするポイントはふたつ。

ひとつはどうやって商品として組み立てるか?
もうひとつはどうやってホスト(サービス提供者)を育てるか?

「日常」を売るとは言いますが、お金をいただく以上、商品・サービスとしてのカタチは整えなければなりません。ひとつの商品としての組み立て方とそれを提供する人の育成方法がみえるとどんどん具体的になっていくと思いますよ。

※新規事業100のカテゴリーは、私の思いつく観光系新規事業を日々書き留める場所。
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