「移動時間距離×旅の目的の変化」をアンケートにも反映された方がいいんじゃないか?

アイディアメモ

移動時間距離はこの100年で鉄道、飛行機によって爆発的に進化しました。

<鉄道移動時間距離>
江戸時代 14日間
幕末(江戸時代) 2~3日 *蒸気船
明治時代(1889) 20時間5分 新橋 ⇔ 神戸間 ※東海道本線全線開通
大正時代(1921) 11時間50分 東京 ⇔ 神戸間 ※当時の特急列車
昭和時代(戦前)(1930) 8時間20分 東京 ⇔ 大阪間 ※特急「燕」
昭和時代(1950) 8時間 東京 ⇔ 大阪間 ※特急「つばめ」復活
昭和時代(1958) 6時間50分 東京 ⇔ 大阪間 ※電車特急「こだま」
昭和時代(1964) 4時間 東京 ⇔ 新大阪間 ※新幹線「ひかり」開業時
昭和時代(1965) 3時間10分 東京 ⇔ 新大阪間 ※新幹線「ひかり」 
平成時代(1992) 2時間30分 東京 ⇔ 新大阪間 ※300系「のぞみ」
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近未来(2037)(予定) 1時間7分 品川 ⇔ 新大阪間 ※リニア新幹線 東京⇒名古屋は2027年

かつては気軽に行けるような場所ではなかったけど、今ではお金と時間さえあれば簡単に行けるようになりました。昭和40~50年代は団体型の国内旅行が広がり、都市部から1泊2日圏内についてはみんなが「行ったことがないところはない」というくらい国内旅行がコモディティ化しました。

平成の30年間はそれが海外旅行にシフトし、大挙して日本人が海外に出かけてハワイ、アメリカ、ヨーロッパから始まり、アジア諸国にも出かけるようになりました。このころからは個人の所得も上がりましたので、団体で連れて行ってもらうのではなく、自分の行きたいところ、やりたいことに合わせるFITの旅行が主流になっていきます。

国内旅行・海外旅行いずれも旅行回数を重ねるうちに、旅は非日常から日常の中に、不要不急ではなく、人生にとって大切な時間となってきました。
このことはコロナ禍の3年間でみんなが身にしみて感じたことかと思います。

そこでふと思ったのですが、

「旅行の目的って、もっと変わってもいいのでは、もっと変わっていくべきなのでは。」

目下、アフターコロナの国内旅行需要喚起策として「県民割」「都民割」、加えて観光庁から「全国旅行支援」などの施策が展開していますが、
その際のアンケートでよく聞かれる「旅行目的」って、

温泉
自然や景勝地の訪問
テーマパーク・レジャーランド
現地グルメ・名物料理
歴史・文化的な名所の訪問
リゾート滞在(海浜)
家族や親戚、友人知人訪問
まち並み散策・まち歩き
ショッピング・買い物
海水浴・マリンスポーツ

こんな選択肢ですよね。(これって目的ではなく、ほとんど目的地ですよね。)

もう少し詳しいアンケートでは、「旅行に行く・行きたい理由」の選択肢としては

日常生活から解放されるため
旅先のおいしいものを求めて
思い出をつくるため
家族の親睦のため
保養、休養のため
美しいものにふれるため
感動したい
未知のものにふれたくて
友達とのつきあいを楽しむため
知識や教養を深めるため
思い出の場所を訪れるため
ぜいたくしたい
自分の人生には旅行は必要不可欠だから

みたいな感じです。

この30年間くらいでライフスタイルも旅の位置づけもおおきく変わってきたと思うのですが、旅行や観光にかかわる機関、事業者の消費者を見る目線が全然変わっていないのでは?と気づかされました。

観光庁の施策としては「第二のふるさとづくり」とか「新たな看板商品」とか「歴史的資源を活用した観光まちづくり」とか打ち出してますし、「着地型商品」「体験・アクティビティ」とかのジャンルも広げようとしています。

でも、アンケートの選択肢にそれらの施策を想起させる選択肢がない。

アンケートって、選択肢があるから答えやすいんです。
普通の人は選択肢がないと答えにくいんです。
てことは、アンケートの選択肢はアンケートをとる人たちの「意思」を反映させることができるのです。ほしい答えを選択肢に入れることもてきますし、ほしくない答えは選択肢から外すこともできるのです。

話を戻しますと、アンケートの選択肢に国とか地域、観光事業者の今後進めていくべきことの選択肢がないということは、「まだ新しい施策が浸透していない」とか「世の中のニーズにマッチしていない」とかの理由があるのかもしれませんが、それよりも「意識して選択肢に入れる」努力がなされていないんでしょう。もしくは私と同じように「選択肢に入れるべき」ということに気がつかなかったんでしょう。

だからいつまでたっても旅行目的の上位は「温泉」「自然や景勝地の訪問」「テーマパーク・レジャーランド」「現地グルメ・名物料理」となってしまいますし、旅行に行きたい理由は「日常生活から解放されるため」「旅先のおいしいものを求めて」「思い出をつくるため」のようになりことにより、それらの理由を満たすことが広告マーケティングのメインになってしまっているということにつながります。旅行パンフレットや観光ガイドブック、旅行マップなどはまさにこの典型であるというですね。

大人も子どもも若者でも、これだけ多くの人たちが日常的に旅に出られる時代になったわけですから、「見る」「食べる」「遊ぶ」というわかりやすい言葉だけでパンフレットを作るだけでなく、その地に行った人だけが感じること、体験できることや現地の人との交流から生まれること、かかわりができることによって生じる新しい関係性等を表現すべきなのではないかと思います。

そしてそれが「第二のふるさとづくり」とか「新たな看板商品」とか「歴史的資源を活用した観光まちづくり」とか打ち出してますし、「着地型商品」「体験・アクティビティ」とかにつながるのではないでしょうか?

意図的でも誘導的でもいいんだと思います。

世の中のアンケートってほとんどがそういう目的でとられてますから。