ゼロウェイストおみやげという発想 63/100

かつて国内、海外のおみやげ品を扱う商事会社に7年ほど出向していました。
海外旅行に行く前に事前におみやげをオーダーすると旅行後の自宅におみやげがまとめて届くという仕組み。当時は日本人も海外旅行に行くことがまだ珍しかったので、いわゆる中国人の「爆買い」のごとく、現地ではブランド品やらおみやげ品やらを買いあさっていました。私も添乗員として同行することが多かったのですが、免税店ではたっぷりと時間をとらないとクレームになるほど。旅行に行ってるのか、買い出しに行ってるのかわからなくなっているほどでした。
そこで「義理みやげ」についてはあらかじめ数がわかっているので、事前オーダーしておけば、旅行中に慌てて買い物をしなくてもよくなるという便利な仕組みがうまれたのでした。

そのころ(1980~90年代)のおみやげの売れ筋は、ハワイでいえば圧倒的に人気だったのがマカデミアナッツチョコ。1箱に20個~30個のチョコが入った大箱を何箱も買ってきて家族、友人、職場に配っていたものです。職場や取引先にマカデミアナッツチョコを持って行って皆の前で開けると海外土産はまだまだ珍しかったこともあり、みんなが集まってきて一つずつつまんで食べてました。

バブル崩壊後(1990年以降)には極端に景気が悪くなり、派手なふるまいを避ける傾向になったため、ウイスキーだ、ブランデーだ、ブランドバッグだ、といったおみやげはビジネスシーンにおいては一気になくなってしまい、BtoB的なまとまったおみやげの市場は一気に縮小し、個人用・家庭用のおみやげが主流となりました。

そうなると大箱のおみやげは売れ筋上位から一気に後退し、500円~1000円ではじめから3~4人分に小分けができていて、ひとりひとりに配りやすいパッケージのものに大きくシフトしました。大箱のおみやげは清潔感を求められ、一つずつ個包装されているものが人気となりました。

1990年代も後半になると「はじめての海外旅行客」はほとんどいなくなり、ほぼ全員が海外旅行のリピーターとなったためにおみやげの需要も漸減傾向となりました。おみやげ業者にとっては需要減、単価減と逆風の時代が始まり、売り上げ回復に向けては、パッケージデザインの工夫、個包装の導入、新商品の開発等の消費刺激策を次々と打ち出さなければ、売り上げの減少傾向に歯止めをかけられないという状態になりました。

2000年代は海外のおみやげより、日本のおみやげが進化していた時期ではないかと思います。
昔ながらの銘菓、伝統工芸品が長く観光土産の定番でしたが、国主導の地域ブランディングの成果もあり、地域の名産品や地場産品をブランド化した新商品の開発が一気に進みました。結構全国一律で急増的に展開されたので、当たりはずれは多かったんじゃないかとは思いますが、道の駅がどんどんでき、バス旅が主流になった時期とも重なったこともあり、重たい荷物を持たずに観光や買い物ができるので結構市場が活性化していたという記憶があります。
キティちゃんとかの全国ブランドのローカル展開が一気に進んだ時期でもあります。

ここ10年は新陳代謝の時機かなぁ。
インターネット上でのランキング記事やSNSでの拡散スピードが一気に高まったこともあり、新しいデザインのおみやげが話題になると集中して売れる時代。
今まで通りのおみやげと1000円で小分けができるこじゃれたおみやげパッケージのお菓子だけでは物足りず、「なにか新しい技術とか開発ストーリー」とかもセットにして売ってる感じですね。
東京駅の売店では総合的な品ぞろえはコンビニのNEWDAYSが対応しており、ほどんどが単一ブランドの専門店として出店しているほどです。生き残りのためにはブランディングの力が大切なようです。

そして、今は残念ながらおみやげ市場はさらに縮小しており、「おみやげを配る」ということすら激減してしまいましたが、もう少しの我慢。

こうしてみると日本のおみやげは時代のニーズに合わせてどんどんと変化をしてきていることがわかります。言葉を変えれば「どんどんとオシャレで派手になってきた」と感じています。
昔からギフトとおみやげは「その人のセンスがわかる」ものといわれてますが、SNSの広がりによって「見映え」が特に重視されるようになってます。
それはそれでいただいた時にはおしゃれでうれしいし、自分のことを考えていいものを買ってきたくれたと思えるのはありがたいです。

でもその反面、肝心な中身よりパッケージ重視の傾向もより強くなっており、「過剰包装」気味のところで加熱している傾向は否定できません。百貨店ではさらにお配り用の紙袋もつけてくれたりします。
いったい何にお金を払っているのかわかりにくくなっているかも。

ということで、ここから先に起こるべきこと。

おみやげの世界にもエコとかゼロウェイストとかの波が必ず訪れます。
ひとつはパッケージデザイン。
過剰包装にならず、しかも環境コンシャスな包装を求められます。

そして、おみやげの素材。
地産地消を謳う食品は今や定番ですし、地場産品はおいしい、新鮮というイメージもあるのでその地域で作られたものを求める傾向は続くと思います。
さらに一歩進めて考えますと、「食材のゼロウェイスト」を考えるべきかと。
観光地は大量の交通、人流を受け入れる産業なので、外からの環境負荷を受け止め、地域に残さないように工夫しなければならないという理屈が徐々に定着するでしょう。
すでにグレタさんたちが航空産業をターゲットにしてますよね。

その時のためにも地域の産品を無駄なく使いきるための出口としておみやげを開発していく必要があるのではないかと思います。名産の果物、野菜、肉類等の大量消費の裏にある大量廃棄の前にビジネスチャンスをみておくタイミングかと。

「ゼロウェイストおみやげ」

アフターコロナの新しい観光に向けて研究すべき時が来ています。

※新規事業100のカテゴリーは、私の思いつく観光系新規事業を日々書き留める場所。
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