アグリゲーター(aggregator)というのは、日本語でいえば、収集(集積)する人・組織・もの。
インターネットで情報流通が盛んになりはじめた2000年くらい(まだダイヤルアップでネットにつないでいたころ)から、情報コンテンツを提供するプロバイダーと配信するネットワークの間に立ち、情報コンテンツをうまく束ねて再編集して発信する役割としてコンテンツアグリゲーターが注目を集めていました。そののち、価格比較サイトとか、キュレーションサイトとかが、アグリゲーターと呼ばれていたと記憶しています。
今回はどちらかというと、その後、2013年に経営コンサルタントの柴沼俊一氏が提唱した、これからのビジネスシーンに必要な人材として「多様な能力を集めてサービスをつくり上げられるビジネスパーソン」である、という定義に近いところの話。それによるとアグリゲーターとは「企業が今持つ商品やサービスの販売を考えるだけでなく、社内外の人材やモノ、技術などを集結し、新たな商品やサービスの調達、それらをつくる仕組みづくりを考える」人のことだそうです。
ということは、「ジェネラリストだけど、時にスペシャリストなスーパーマネージャーだったり、プロデューサーだったりする人」なのでしょうか。でも、確かに長年東京で仕事をしているとものすごく頭が高回転していて、仕事をぐいぐいと確実にまとめ上げている人に出会うことがあります。まあ、そうそう存在しているとは思えませんが。。。
という人物設定を踏まえて、ローカルツーリズムにおける「アグリゲーター」という仕事について考えてみます。アグリゲーターの役割は、目的のために必要なリソースを集め、組み合わせ、調整し、その先を可視化して示し、目的を達成させること。地域だとか、組織だとかの壁を超えた存在が理想です。
ローカルツーリズムアグリゲーター(仮称)にやってほしいこと
○合意形成プロセスの確認・整理
・「誰がどの場で決定するのか?」を可視化したものを意思決定プロセスの中で確認する。
⇒観光にかかわる集まりはプレイヤーが多いため、ともすると誰かの発言でブレたりするので、公に決めたことを守らせる。
○解決すべき課題の確認
・「何に困っているのか?なぜできないのか?」を明示し、共有する。
⇒ともすると課題を理解していない、お互いが勝手に解釈したままで議論をしていることがよくあるので共通の言葉で残す。
○解決案の提示
・外の「できる人」「答えをもっている人」、成功事例、参考事例等と中で「できること・人」をアグリゲートして解決案を示す。
⇒中の人が持っていない外の情報、技術を意訳して伝えることで検討しやすくする。
○事業計画の策定
・解決策が決定したら、目標、KPI設定、実施事項整理、役割分担、スケジュール等、事業計画に落とし込んで共有
○実施計画への落とし込み
・実施事項を精査し、タスクへとブレイクダウンしてメンバーをアサインし、役割を割り振る。
⇒事業計画を見て完成までを想像できる人はほどんどいないので、全体像を語った後にはそれを分解してひとつずつの作業として可視化する。
○会議体の設定と運営
・定期的な会議において、進捗状況を確認し、実施計画を常に修正しながらタスクを着実に実行
⇒地域のメンバーだけで進めると、時になあなあとなってしまうところをアグリゲーターがサポートして、不足するリソースやできない場合の解決策を内外のリソースを使って即座に提案する。
まとめますと、意思決定プロセスを把握し、課題を整理し、解決策を提案する。そしてタスクに落とし込み、遅滞なく実行するために支援を行うということで、一見、管理マネージャー的な仕事のようですが、大切なのは、地域の中だけでは調達しきれていない情報や知見、人脈を束ねて、「地域の今に即した提案をする力」。プロセス支援のスキルに加えて、「地域」と「地域」、「地域」と「消費者」、「地域」と「専門家」等、地域にないリソースをつなぎ合わせることにより、事業を確実に進捗させるために必要な最適解を提案して前に進める能力といえます。
ローカルツーリズムアグリゲーター(仮称)という職業があるならば、企画コンペで魔法のような解決策を提案する人のことではなく、地域において「できていないこと」「わかっていないこと」を明らかにして、内外の情報や「できる人」からのアドバイスを集めて、解決のための道すじを提案し、合意を得る。次にそれを具体的な工程に落とし込んで、時に都会のプロのチカラを利用しつつも、地域の方と一緒になって推進していく頼れる存在となることでしょう。
観光コンサルでもなく、旅行会社でもなく、広告代理店でもなく。。。
地域のDMO組織でもなく、自治体でもない。。。
地域のやる気を引き出してくれる、そして、地域で着実に観光の仕事を進めてくれる、こういう「間を埋める」スキルのある外の存在の方って、絶対に必要だと思いますね。