AR(拡張現実)観光タクシーってイケるか? 104/100

以前、「二刀流」タクシードライバー 21/100 という記事で観光タクシーの発展形として、タクシードライバーが観光ガイドを行うのではなく、「観光ガイドがタクシードライバーになるべき」と提案しました。

今回のAR観光タクシーの発想は「バスガイドがARで案内するタブレット端末」。
ARでは現実の世界にバーチャルな文字情報、画像映像情報を表示して、現実を目で見るだけでは補完しきれない情報をひとつの画面の中でまとめることにより、より豊かな体験、よりリッチな情報取得ができるというしくみです。

  • スマホで映している建物の広告が立体映像の中でリアルタイムで表示される
  • 現地の景色の上にARで情報を表示しながら道案内してくれる
  • GPS機能で、来場者にしか見れないAR画像・動画を配信する
  • ARと位置情報を利用したスタンプラリーで回遊性を高める
  • スマホをかざすと当時の姿を復元した映像や3DCGがみられる
  • スマホで街中を映すと巨大なアニメキャラクターが出てきて記念写真を撮れる

ARはすでにずいぶんいろいろなことができるのですが、今一つ利用経験に乏しい。
現実のリアル映像にバーチャルな情報を組み合わせるのは確かに面白いと思うのですが、残念ながら、ポケモンGoくらいしか覚えてませんね。

なぜだろうか?

  • 観光で使うとなると電池の消耗が心配で使いたくない
  • バーチャル画像・映像は、パッと見は興味を持つが慣れてくると意外性に乏しい
  • ひとりひとりのスマホで見るので見ているものがバラバラになるから一体感が乏しい
  • 画像・映像に手間をかけすぎていて、情報やストーリーが頭に入ってこない

などなどいろいろとダメな点は思いつくものの、一概にコンテンツが面白くないと決めつけるほどでもない。現にポケモンGoやエヴァンゲリオンとかのキャラクターに力のあるものも使われてます。

気がついたのは、観光で使う場合、観光客ってずっと移動しているのでどんどんと情報は入ってくるし、景色もめまぐるしく変わっていくわけです。だから、ARで作りこみすぎると観光客の移動距離とか、スピードと準備しているARコンテンツの量があっていないのでは。という点です。

天守閣のない城跡にスマホをかざすとバーチャル天守閣が見える、みたいなARサービスがありますが、外観の3Dイラストがみられるだけ。十秒くらい「ほ~っ」といいながらみればそれ以上のアクションがあるわけじゃないことがわかり、次の地点に移動。その場でしか見られないのでその映像はあまり記憶に残らない。そう考えると旅行や観光は情報消費量がとても多いので、大半が捨てる情報であって、記憶に残る情報がとても少ないことに気がつきますね。

「現在いる地点」と「そこにひもづく情報」の組み合わせが延々と続けられる中で、スマホを使って時間をかけて作りこんだ3D画像とかをいくつか見せて、満足感・納得感を得られるように仕向けるという作業の難しさを感じます。

そこで冒頭に戻りますと、
AR観光タクシーサービスを考えるのですが、どんなイメージかといいますと、「バスガイドが案内するような感じの情報提供サービスをAR技術を使ってタクシーでできないか」というもの。
バスガイドさんって、進行方向に背中を向けていながらも、目の前でどんどん変わる景色のなかからガイドポイントを見つけて、案内してくれます。しかし、バスは動いてますから次の瞬間には別の案内が始まる。という流れです。つまり、情報がどんどん消費されても次々と新しい情報で上書きしながら、旅を進めていくわけです。ものすごい情報量だとはいえるのですが、以前はそれが「ガイド教本」として主な道中の観光案内が地点情報と紐づいて教本としてまとまっていたのです。もっともこのようなガイドサービスも近年ではなかなかお目にかかれないサービスとなっていますが。

話を戻しますと、タクシーに乗車中に窓の外の風景や建物、木々やお花、それぞれの情報のすべてを知っている、もしくはそれについて語れるタクシードライバーさんはいませんよね。私なぞは背中を向けて一所懸命運転しているドライバーさんに声をかけるタイミングが見つからず、質問機会を逸することがほとんどです(笑)

そんなこともあり、ちょっとほしいのがAR観光タクシー。こんなイメージ。
・お客さんが後部座席にふたり座っている
・後部座席のふたりが見やすい前列のシートの背もたれの真ん中にタブレット端末が設置してある
・タブレット端末には車両前部のドライブレコーダーの映像がリアルタイム表示されている。
・リアルタイム映像の動きに合わせて、観光スポットやめずらしい建物、地元で人気の名店などが映り込むとアイコンが点滅して現れる。
・お客さんがアイコンをタップするとそこに関する情報が画面の右1/3くらいのエリアに写真とともに表示される。場合によっては読み上げもできる。
・その情報に付随するQRコードを読み込めば、自分のスマホに情報を保存できる。
・外国人はそのQRコードから多言語翻訳した情報が得られる。

「ARを使うぞ~」みたいなことではなく、外の景色とともに情報を垂れ流しで表示して、興味を持った時だけ、画面をタップして情報を入手できる。そんな感じでいいのです。
航空機の外部カメラみたいな感じで、動いている景色の映像って結構見入ってしまいますよね。そこに緯度経度情報を持った地点の情報をAR技術を使って可視化できるようにするだけ。

もともとの情報をどうやって集めるのか、説明する情報は誰が作るのかとか、いろいろ仕込まないとダメでしょうが、ある程度ルートが決まっている観光タクシーのコースであれば、ある程度の観光ポイントに絞って情報を搭載すれば、それなりの情報提供になると思います。できれば、ドライバーさんや地元のガイドさんが普段お客さんに向かって案内しているような地元の人たちならではの地点の、独自性の高い説明文を作っていただけるとありがたいですね。

このサービスのメリットとしては、
ドライバーさんにとっては、運転に集中でき、必要と感じた部分は補足説明すればよい。
お客さんはあれこれたくさんすぎる情報をあびることなく、興味を持った所だけ情報を拾える。
ずっとスマホを表示したままではないので、バッテリーを気にする必要もない。
カーナビだと運転中に見ることはできないし、タクシーだからお客さんだけが安心して利用できる。

さほど難しい技術はいらないと思いますが、車載器なので、業界でシステム導入している会社の事業かなと思います。アプリの機能としては、
・ドライブレコーダーの映像をリアルタイムにタブレットに飛ばす機能
・緯度経度情報に合わせて映像と連動した場所にアイコンをプロットして表示する機能
・アイコンをタップすると詳細情報や画像が表示される機能
・管理側では、スポット情報をスマホから簡単にアップできる機能
こんな感じですね。

「通常の賃走と貸切タクシーとの違い」は、メーター運賃から事前確定の時間制運賃かという運賃体系の違い。でも、「貸切タクシーと観光タクシー」の違いは貸切案賃であることは同じなのですが、タクシー会社によって説明はまちまち。観光案内ができるかどうか、観光案内をするかどうか、下車観光まで案内するかどうかは結構ドライバーさん個人の能力で異なっているというのが現状かと思います。このように明確なサービスの違いだったり、サービス範囲の違いがないので観光タクシーはもうひとつ大きな市場になっていないような気がします。

これからますます高齢化社会になっていくわけですから、鉄道やバスにはできない「ドアツードア」での送迎や移動、観光のサービスがより必要になると思います。そのサービスはタクシーにしかできませんから、今のうちにもっと進化させておきたいと思っています。
そんなこともあって、「観光タクシー」の市場拡大に向けては、貸切タクシーとの明確な差別化のためにもこういうシステムを伴った観光案内サービスがついているという発想も必要なのではないかと思う次第です。