タクシー定額乗り放題サービス「タク放題」「のりあい放題」は高齢者の日常の足になれるのか? 108/100

新規事業100

私が事業開発支援をさせていただいている静岡TaaSでは、タクシーの定額乗り放題サービス「タク放題」サービスに加えて、1月16日から「のりあい放題」という乗り合いバスのタクシー版の乗り放題サービスを開始しました。スマホアプリを使ってAIが配車ルートを提案して、タクシーを会員同士でシェアして乗合う会員制移動サービスとなります。

静岡TaaS 乗り合い放題イメージ https://www.shizuoka-taas.com/maas/

タク放題・・・一人または家族と同時に乗車して目的地にまっすぐ向かう。
https://www.shizuoka-taas.com/takuhodai/

のりあい放題・・・一人で乗車して目的地に向かうが、途中で他の会員が同乗するために迂回したあとに目的地に向かうことがある。タク放題と比べて、時間はかかるが料金は安くなる。のりあい客がいなければそのまま直行できる。
https://www.shizuoka-taas.com/maas/

いずれも平日10-17時の運行ですから、主に高齢者のみなさまの日常の足として利用されるイメージです。ですから「タク放題」は65歳以上のお客様8000円/月。「のりあい放題」は75歳以上のお客様は5500円/月というのが最安値で設定されています。(静岡市葵区内の指定エリア内の移動に限ります)

一か月間に何度乗ってもこの料金なんです。画期的ですね。

定期券サービスを使う人には理由がある。

現在のサービス利用者の方を見ると、日常のお買い物に利用される方、通院やリハビリに使われる方が多く、なかには百貨店や美容室、そしてお昼間のカラオケスナックに日参される方もいらっしゃいます。これまで外出したくてもできなかった方や家族に送迎してもらっていた方たちにとっては、気兼ねなく外出できるタクシーということで喜んでいただいています。

このサービスをもっともっと地域の皆さんの日常移動に使ってもらいたい。
私もかれこれ7~8年前からこのようなタクシーサービスの開発、販売に携わってきましたが、なかなか大きな市場になっていないのが実情です。

・エリアが限られている
・平日の10-17時の運行

という制限範囲内ですから、利用可能な対象者は限られています。
とはいえ、高齢化社会の日本ですからエリア内にはたくさんの対象者がいらっしゃるわけです。

なぜだろう。。。
というときに、今回の静岡での実証実験のデータを見ていて、気がついたことがあります。

<継続利用のお客様>
・定期的に通院しているケース
・お買い物頻度が高い方のケース
<短期利用のお客様>
・短期的な治療のために通院する人、夏休みのお孫さんの世話等

以上の方々は「お値段以上に」思い切り利用しているケースですが、
一ヵ月のおでかけ利用が「お値段以下」になってしまうと、途中で継続しなくなるというとても現実的な選択をされます。まあ、当たり前といえば当たり前ですが。

「お得なプライス」だけでは定期券サービスは使わない

携帯電話って使っても使わなくても高い料金を払い続けているイメージありますよね。
タクシーの定期券も同じように「車を持っていない人」「送迎してもらえない人」にとってはいつでも安く利用できるサービスといえます。エリア内とはいえタクシーに乗り放題で一ヵ月8000円と考えると1乗車当たり片道1000円としても月に4回出かける方ならば簡単に元が取れます。

一方で、「数百万円の乗用車を買って、駐車場代を支払い、ガソリン代、車検代まで支払ってまでなぜマイカーを維持したいのか?」という疑問もあります。

・200万円の車を5年間使った時の一か月あたりのコスト・・・月33,333円
・駐車場代(そこそこの都会) 月10,000円
・ガソリン代(主に土日に乗る) 月5,000円
・その他 車検代など

以前、ご利用いただいた76歳のご主人からのひとことが印象に残ってます。
「日常の移動はタクシーでもいいけど、ゴルフ場だけはマイカーで行きたいんだなぁ~」
となかなか免許証の返納ができずに悩んでいらっしゃいました。

「お得なプライス」だけでは説明できないんですよね~。

では、このサービスをもっと利用していただくにはどうする?

このサービスの顕在化している利用者は「平日日中におでかけする目的がある」「目的地が複数でもエリア内で完結できる」という方のようです。そして、基本的に「お値段以上」に利用します。

では、潜在的な利用者とはどんなプロファイルでしょうか?

①「平日日中におでかけする目的がある」けど、まだ利用していない
②「平日日中におでかけする目的がある」けど、誰かに送迎してもらっておでかけしている
③「平日日中におでかけする目的がある」けど、誰かに送迎してもらうのに気兼ねがある
④「平日日中におでかけしたい」けど、移動手段がない
⑤「平日日中におでかけしたい」けど、きっかけがない

こんな感じかな。

①~③については、今後さらにプロモーションをかけて需要を顕在化させるターゲット。
④⑤については、「おでかけしたい」というニーズを「おでかけする目的がある」へと変化させ、行動変容を喚起していく必要があります。

「おでかけしたい」ニーズの顕在化アイディア

そこでちょっとしたアイディア。

特に高齢者の方が多いと思いますが、日々出かけたほうがいいと思いつつも「外に出るのがおっくう」で結局1日中テレビを見て過ごしてしまう問題。

それを解決するのは<定額タクシー+おでかけ支援コールセンター>(案)

利用者イメージ:75歳男性、健康ではあるが特に趣味はなく、最近は出かけるのが面倒。
        会社員時代は友だちがいたが、退職後は地元とのつながりが薄くて仲間が増えない。
        奥さんは元気で毎日友だちと遊び歩いている。
<サービス内容はとても簡単>
・週に2回、コールセンターから定額タクシー利用者のご自宅に電話でお出かけの「お誘い」をします。
 「お誘いの種類」・・・ショッピングセンター、スーパーマーケット、市民イベント、映画

このサービスのポイントは
・「タクシー乗り放題」を売るのではなく
・「おでかけのキッカケ」を移動手段を付けて販売する
とアプローチ方法を全く変えていること。

コールセンターがアウトバウンドコールで利用者の方に定期的にお誘い電話をするだけでも、家の外との接点が新しくできるわけですから、高齢者にとって刺激になるのは間違いないです。
同居されているご家族の方も引きこもりがちな生活の見直しになると喜んでいただけるような気がします。これが独居老人となりますと、新しい見守りサービスになるかもしれません。

世間との接点が途切れかけている高齢者に外出していただき、お金を使っていただくわけですから、役所としても結構ありがたいサービスになるのでは。。。
これは市役所の新しいお仕事かもしれませんね。健康面でも経済面でも効果があると思います。

この方法にかかわらず、「お出かけ促進サービス」は時代のニーズに合っていると思います。
さらにいろいろと考えてみるといいんでしょうね。