次はウェルネスツーリズムがキーワード

アイディアメモ

ここにきてツーリズム業界でよく聞く「ウェルネスツーリズム」という言葉。
ヨガとか瞑想、フィットネスだけでなく、スパで癒される、ヘルシーな食事をいただく、地域の人たちとの交流などを総称して「ウェルネス=豊かな人生」と解釈し、それらを提供する旅行の総称としてウェルネスツーリズムといっております。癒されるもの、気持ちが整うもの、倫理的に正しいもの、すべてが豊かな人生につながっているという概念でしょうか。

これまでこの手のツーリズムは健康とかダイエットとかの「実現」を目的にしてさまざまな商品を開発してきたのですが、言葉は踊れどもうひとつ大きな市場にはなってきませんでした。そこでは至極真面目に「成果の数値化」「行動変容の具体的な成果」を明らかなデータで示さなければならないという日本人のまじめさに基づく不文律的なルールがあったのです。実際には基本的に医療行為でない限り、「何キロやせる」とか「身も心もすっきりした」とかを成果として挙げても特段の問題はなかったように思います。また、ダイエットツアーとか「決死の覚悟」で臨むようなツアーがテレビで紹介されたのもあってか、「お金を払って知らない場所で苦行を体験する」ことに達成感を覚える人は少なかったという印象です。

ということで、ウェルネスツーリズム。
「健康」というより「元気」とか「爽快感」とかに近い感覚を旅行を通じて体感すること。
つまり、病気ではないという客観的な事実は求められず、本人がどう感じるか、ポジティブになったのか、という「自己満足でもよい」というところに免罪符的な感覚を覚えるということですね。

ですから、対象となるアクティビティーは全部のせのトッピング状態(笑)
「身体のウェルネス」「精神のウェルネス」「感情のウェルネス」「スピリチュアルウェルネス」「社会のウェルネス」「環境のウェルネス」
リラクゼーションからネイチャーアクティビティー、ワーケーションからチームビルディングでも、個人も団体もすべて包含されてます。
出発前から比べて結果として「ウェルネス」を感じられればそれでよし。
サウナ的な言葉でいえば「整う旅」ということですね。
ただし、できるだけ消費型消耗型でなく、サステナブルでエシカルでエコなアクティビティーを通じて得られるものが求められているということになります。意外とここがポイントなんですが、こういう欧米系の人たちが好む「正しい消費」は富裕層の心をつかんでいるのです。
お金に余裕ができた人たちは心身の健康に興味を持ち始める。「正しいこと」を求め始める。そして、消費にも正しさ、正しい目的がほしくなるということで、サステナブルでエシカルでエコな活動は支持され、市場拡大のきっかけをもたらしていると考えます。
富裕層が火をつけた、汗臭さのない、正当性があり、格好いいツーリズム。
生まれ育ちがいい感じ。
これであればみんなが受け入れやすい。
「ウェルネスツーリズム」という言葉はコロナ禍で抱えまくった様々なストレスからの解放を求める世界中から支持されるムーヴメントとして今後定着していくことになるでしょう。

これまで「着地型観光」という名前で、地域が主体的にさまざまな体験プログラムを造成、販売をしてきましたが、なかなか成功事例に恵まれてきませんでした。原因としては日本の観光は土日・連休に集中してしまい、人手のかかる体験型のプログラムは売れたとしても休日に偏り、平日の売り上げが期待できず年間を通じてサービスを維持継続できなかったとか、本業の傍らで手間をかけずに低価格で提供するケースも多く、利益が残らない商品だったとか、前日・当日のような現地に着いてからの申し込みが大半なのに1週間前に手じまいしてしまい、ニーズに対応できていなかったり、需要の取り込みがうまくいっていませんでした。

ウェルネスツーリズムについては世界的なトレンドであること、富裕層が注目していることなどの理由からインバウンド市場としてとても期待ができます。これまでは市場が小さいとか、告知ができていないとかの理由から宣伝告知も進んでいませんでしたが、コロナ禍からの回復が明らかになってきた今、「着地型」という言葉でなく、「ウェルネスツーリズム」に言葉を置き換えてこのマーケットへの取り組みを進めることが結果として今までできてこなかった「着地型」を成功に導くきっかけになるのではないかと思います。