祭を保存して再現するというビジネス 115/100

新規事業100

そろそろ夏が近づいてきましたが、町なかで生まれ育った私としては夏の祭りというと盆踊りくらいしか思い出がなく、あまりおみこしを担いで町なかを練り歩くお祭りに参加した記憶がありません。そんな私ですが、一番好きな祭りは祇園祭。唯一、祇園祭の時だけは京都に行きたくなります。40年以上前になりますが、学生時代に市役所前の辻回しの桟敷席のアルバイトで間近に見たときの印象があまりにも強かったからでしょうか、それ以来、タイミングが合えば宵山に合わせて京都を訪ねています。去年も行きましたね。

日本の祭りをもっと盛り上げ、いつまでも続けてもらいたいという気持ちは日本人なら誰しも思うのではないでしょうか?でも、日本には30万以上の祭りがあるといわれており、地域の祭りは資金不足・担い手不足などの要因で“消滅”しているようです。原因は過疎化と少子高齢化でしょう。それらの地域では祭の運営は自治体や自治会組織が担っているそうですが、運営自体ができなくなればその資金もでなくなり、やがて消滅していくという流れとなります。

人が集まらない、担い手もいないという地域のお祭り支援に乗り出したオマツリジャパンというベンチャーさんがいます。お祭りの集客から運営まで手伝ってくれたり、スポンサー集めまで対応してくれます。立ち上げ段階でお話を伺った時にはおおむねの地域の祭り運営の資金が少ないことから、なかなかビジネスとしては大変かなと心配していましたが、あれからコロナ禍をこえてもまだまだ頑張ってらっしゃるので相当な努力をされてこられたんだなあと感心します。

これから先は地域の村落からの人口流出がますます進みますから、団塊の世代が超高齢化となるこれからは祭りの消滅危機がさらに深刻化することでしょう。
となると、現在の祭りの運営を支援する、すなわち、主体者は地域の人たちでそこに足りないものを補助するという発想ではなく、もはや祭りがなくなる前提でアーカイブをする事業のほうが必要となってくると感じます。

お祭りのアーカイブ事業

・記録・・・お祭りの様子を映像化して残す
・記憶・・・祭りの歴史、言い伝えを残す
・保存・・・過去のお祭りの写真、動画を収集保存
これらをクラウドに保存して、いつでもアクセスできる環境を継続提供する。

それに加えて、あったらいいなと思うビジネスモデルは
●お祭り再現サービス
お祭りアーカイブ事業者のスタッフがお祭りのノウハウを地元の人たちから継承し、完全再現できるようにトレーニングしておく。そして、地域に呼ばれたらトレーニングしたメンバーが現地に出向いて、高齢者のみなさんの代わりにお祭りを再現する。
●お祭り道具の保管サービス
大切なおみこしや衣装、装飾類を地域に代わって保管して、いつでも再現できるように準備しておく。

お祭りは地域の高齢者が無理して「自前でやる」ものではなく、しっかり保存継承して若い人たちに再現してもらいながら「見る」ものへと変わらざるを得ないでしょう。

コロナ禍で中止されてしまったお祭りやイベントが復活できないというニュースもよく気かけるようになりました。これからは町なかであってもお祭り消滅の危機は課題となることでしょう。
自治体からは伝統文化の保存のための経費として毎年○○万円いただきつつ、必要に応じて現地で再現するという形であれば安定した事業収益を得られるお祭り集団が都道府県に数社ずつ存在し続けられるのではないでしょうか?
これからは自治会組織に任せるのではなく、地域としてしっかりとアーカイブして、いつでも再現できるようにしてでも、伝統文化芸能を守り続けるようにしなければなりませんよね。