たった1年で80万人の会員を獲得し、それでもまだまだCMを打ち、キャンペーンを張り、さらに会員獲得を進めているchoco zap チョコザップですが、なぜここまで急成長できているのか?
よく言われているのはいわゆる「ガチ勢」を排除したこと。
つまり、筋肉モリモリのおにいさん、おねえさんをターゲットにせず、日頃運動不足で悩んでいる、できてない人にターゲットを絞ったこと。「ガチ勢」は本格的な機材がないと納得しませんが、「できてない人」はちょっと試してみたい、自分でもできる簡単な機材でいいから、とにかくやってみようという人たちなので、あまりこだわりはない。「ちょこっと」やって安心したい「ちょこっとの人」。
かくなる私もそんな一人ですが。。。
しかも「ガチ勢」のマーケットはとても小さい半面、「ちょこっとの人」マーケットはとても広い!
よくたとえに出すのですが、「なぜあれだけ英会話教室があって、みんな通って勉強しているのにどうして英会話教室がなくならないのか?」という疑問に対して、「英語ができるようになって卒業する人がほとんどいないから」というのが答え。
ちょこっとやるけど続かない「ちょこっとの人」は永久に減らないという構造なのです(笑)
ですから、チョコザップの狙っているターゲットは無限(笑)なわけです。
おそらくチョコザップに通っている人のほとんどが「ガチ勢」にはならないと思います。はい。
そのことと「ママチャリサイクリング」の関係性は?
最近、日本全国の観光地で「サイクルツーリズム」という言葉がよく聞かれるようになりました。その象徴は瀬戸内のしまなみ海道。今ではインバウンドの外国人がわざわざここを走るためにやってくるようになっています。今や政府もサイクルツーリズムを積極的に推進しています。色とりどりのウェアを着て、さっそうと走る姿と瀬戸内の風景はピッタリ。とてもいい時間を過ごせる体験だと思います。
一方でこんな話も。
かつて私の息子が友人と自転車を借りて尾道から今治まで走ったのですが、日頃から運動をしていない友人たちは途中でキヴアップ。後半戦は押して歩いて大変だったと聞きました。
尾道から今治までは何と70km。
いきなり走るのはとても大変ですよね~。
ということで、現在、この市場をリードしているのも実は「ガチ勢」でありまして、うん十万円するバイク(自転車とは言いません)でさっそうと走る人たち。
頑張っている姿を見るだけでも憧れますよね~。
ただ、いいたいのはこの市場もある程度来ると「ガチ勢」だけでは頭打ちになる恐れがあります。
そこでタイトルにあります「ママチャリサイクリング」の登場。
もっと気軽に、体力づくりのためだけでなく、自分の趣味や好きな景色を求めてゆっくりと走る自転車の旅はこれから伸びていくことでしょう。ありがたいことに「電動アシスト付自転車」が普及して、体力に自信がない人でも気にせずに参加できます。車だと駐車場に困るし、レンタカー代金も結構かかりますから、結果、自転車の旅がおすすめなんです。電動アシストにより「ちょこっとの人」が「できる人」に変われるというところがチョコザップや英会話とは違うのです。
さて、私が活動している上越市のほうでこのたび、上越妙高駅でこの秋新たにスタートした「上越妙高駅前レンタルサイクル」。おかげさまで告知を開始してすぐにご利用いただいた方は意外な?!ことに「お城ファン」のみなさま。
上越には戦国時代から江戸時代にかけて築城された城跡がいくつも残っています。代表的なのは上杉謙信公の居城であった春日山城。そして江戸時代に入って作られた徳川家康の六男、松平忠輝の居城である高田城、現在は高田城址公園三重櫓が復元されて公開されています。
一般的な観光客のみなさんはこのふたつの超有名なお城を見にいくのですが、マニアな方はもうひとつ、続日本100名城に選ばれた「鮫ヶ尾城跡」。
鮫ヶ尾城といえば、上杉謙信の死去に伴う御館の乱(おたてのらん、1579年)の際に、上杉景勝が上杉景虎を追い詰め、景虎を自害させたということで有名な山城ですが、地元の人かマニアな方しか知らないお城です。そして、鮫ヶ尾城跡については最寄りに鉄道駅がなく、これまで車がなければいけない場所だったのですが、このたびのレンタルサイクル開始により、お城ファンのみなさんの中ではとてもよろこんでいただいているようです 。
歩いていくには遠すぎる、レンタカーを借りるほどの距離でもない、自転車があればなぁ。。。
みたいなニーズにドンピシャだったようですね。「走るのが目的」ではなく、「興味のあるところ、行きたいところに行く手段」としてのサイクリングの需要は確実にあります。
サイクルツーリズムというと、どちらかといえばかっこいいバイクにまたがり、気合を入れたサイクリングを想像してしまいますが、そういった「ガチ勢」ではなく、特定の趣味の領域とか、車の代わりにちょっと乗ってみるとかの「ちょこっとの人」レベルで普及していくのが好ましいと思います。雪国新潟の人たちは普段100m先のコンビニでも車で行く方も多く、「自転車に乗らない習慣」の方が多いようです。そんな方たちにも冬の時期以外はぜひ自転車でお出かけしていただきたいものです。
そして、地域としてもう一つ取り組みたいこと。
それは、自転車でツアーガイドができる人を増やすこと。
今後、インバウンド外国人観光客が増加していくとともに、一般的な市内観光だけでなく、一般的にアドベンチャーツーリズムといわれるような自ら体を動かしてアクティブに観光したいという需要も増えていくことでしょう。また、サステナビリティの観点からも二酸化炭素を排出しない乗り物を好んで利用する外国人も多いことから、地域を自転車で散策するニーズも高まるものと思います。
そんなときに街中を気軽に自転車で一緒に走ってくれる案内人の存在は不可欠。外国語に対応できて、自転車で案内できるガイドさんの育成を進めた方がいいですね。
外国人と街中をサイクリングすれば、これまで車で通り過ぎていたようなところに目を留め、地域住民にはあまりにも当たり前すぎて見過ごしていたような、思ってもみなかったような地域の魅力が発見されることでしょう。
岐阜県飛騨古川に全世界から毎年数千人の外国人が集まるという「里山エクスペリエンス」さんはガイド付きのサイクリングツアーの草分け的存在。なにげない田舎の農村をゆっくりと走りながら、地元の人たちとコミュニケーションをとりながら走るだけなのですが、そこが一番の人気のポイント、「なにげない里山の日常」が素晴らしい観光資源であることを発見させてくれています。このサイクリングツアーはまさしく全国どこでもできること。
ただし、単に自転車とガイドさんを用意するだけでできるものでなく、
・参加者とガイドの関係性の作り方
・参加者の興味がどこにあるのかを理解する能力
・日々の参加者とのやり取りの中から見つける外国人目線の魅力の発見
など、日々のガイドの中から参加者満足を高めるための工夫と努力があって初めて参加者も満足し、その結果が口コミで広がると思いますし、リピーターにもなっていただけると思います。
レンタルサイクルをきっかけに新しいサイクルツーリズムが広がっていくことを期待します。