集客人数を数えるより、何分滞在していたかを知ることで「場の価値」は見える化できる

観光入込客統計・・・観光庁の定量調査として観光地・エリアにどれくらいのお客さんが来てどれくらいの消費をするかのデータの蓄積。目的は観光立国の実現に向けた取組を進める上で、地域の状況を的確に把握し、信頼性の高いデータに基づく観光政策の企画立案・検証を行うためのもの。

そして、デジタル田園都市国家構想が出たあたりから行政の中で流行り?!つつある言葉。
EBPM(Evidence Based Policy Making)・・・「証拠に基づく政策立案」とは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることです。政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータを活用したEBPMの推進は、政策の有効性を高め、国民の行政への信頼確保に資するものです。(内閣府より)

今後は統計データをデジタルに整備することにより、今までやってきたから今年もこの予算のままで行こうとか、ここには慣例的にこの予算を拠出しているから変えにくいとかではないのだ、ではなく、データ根拠に基づいて次に何をすべきか、来年はこのイベントを実施すべきかどうか、事業規模と予算は適正なのかなどの判断をすべき、という流れができつつあるようです。

まあこの時代ですから、当たり前といえば当たり前のことですが、実際にはなかなか浸透していないんだろうなぁと思っています。その理由として考えられるのが、「データはあるけど分析できない」問題があるのではないかと思っています。そしてもう一つの理由として「データはあるけど使えるデータになっていない」問題。

そこで、私の関わっている事業のひとつに、Free Wi-Fiと同様のWi-Fiアクセスポイントを使ったセンサー技術で人流データを取得する“人の存在のみえる化”事業というものがあります。
みなさんのお手元のスマホがWi-Fiスポットを感知している仕組みを利用して、アクセスポイント周辺にどれくらいの人が存在しているかのデータを取得してグラフやヒートマップとして「見える化」する仕事です。

一般的に有名なのはGoogleで飲食店を検索したときに棒グラフと共に「通常より混んでいます」とかの表示があると思いますが、あれと同じ仕組みです。そのデータは携帯電話キャリアがセットしたFreeWi-Fiで拾っているアクセスデータを可視化したものとなります。全国に張り巡らされたネットワークでスポットスポットの混雑状況を知ることができるビッグデータです。

一方、私たちの事業は、上記のようなすでに設置されたアクセスポイントではなく、必要な時間、必要な場所に応じて臨機応変にWi-Fiのアンテナを設置して、その場のデータを取得して「見える化」していくというものです。ですから、設置済みのWi-Fiアクセスポイントがなくても、そこにアンテナを設置して計測することが可能です。(ちなみに個人情報は特定できない仕様になっています。)

デジタルマネージウィズエー
https://wiz-a.jp/service/ascs_reserch/

このビジネスモデルを見た時に初めに思ったこと
・その場にいる人数がデジタルデータとして取得できるのであれば、自治体の観光統計ってアナログ集計が多いみたいだからDXのツールとして売れるのでは!
・大手携帯会社のアクセスデータは全国に無数にあるけど、たとえば目の前にある駅の西口と東口、改札と駅前ロータリーとかの細かなデータ取得には使えないから、ピンポイントで勝てるのでは。
・とはいえ、既存のWi-fiアンテナ機器類を使えばデータ取得できるということで差別化が難しいよなぁ。

ということを思いつつ、実際に出てきたデータをみて、リアルタイムに近い状態でデジタルデータとして確認できる仕組み自体に面白味はあるし、見える化できることによる発見や驚きがありました。このタイミングではまだ、通行量調査でカチカチとカウントしているものがデジタル化されるだけにしか見えていなかったのです。

そこからさらに数か月間、データを見ては議論しながら「足りないもの」を探していたところ、ある時に目の前の新幹線上越妙高駅の中で、16時台には通路には人が全然いないのに売店には人が多いことに気がつきました。データで見てみると、15時台と17時台の通行量が多いけど、16時台については15時台と17時台の1/2~1/3程度。この理由は明確で、ローカルな新幹線駅のため16時台には新幹線の発着がないからです(笑)。でも確かにその時間帯に駅に滞在する人たちは通路にはいないものの、お土産売店やコンビニでお土産やドリンクを買っていたのです。

そこで15時~17時台の通行量だけでなく、「駅内で5分以上の滞在している人数」を比較してみたところ、15時台、16時台、17時台ほとんど同じ人数だったのです。

そこで分かったのは、
・通行量=利用者数だけの多い・少ないだけではみえないものがある。
・そのエリアにおけるひとりひとりの滞在時間がわかると「場の価値」が見えてくる。
・「場の価値」とはそこで消費する時間や消費するお金だと考えてみる。
・すると滞在者数×滞在時間で「場の価値」が図れるのではないか?

お店の方からすれば、人通りは少ないけど、その時間帯は休憩時間ではなく、新幹線を待っている人たちがゆっくりと買い物をしてくる「稼ぎ時」(=滞在者数×滞在時間が高い)だったということです。

これがあると測りたくなるところ多いですよねぇ。。。
・イベントやお祭り
・観光スポット
・商業施設 など
滞在者数×滞在時間をかけ合わせるだけでも、いろいろな気づきや発見が生まれ、そこではもっと消費を伸ばすためにはどうすればいいのか、なぜみんな短時間で帰ってしまうのか、来年どうするかなどなど、議論が巻き起こることでしょう。そして、データに基づいて的確に判断を行うEBPMに一歩ずつ近づいていくこととなるでしょう。

このようなプロセスを経て、現在、私たちはピンポイントのデータ取得の精度を高め、「場の価値」を見える化するデスクトップリサーチツールを開発して、営業を始めています。


観光統計や通行量調査を始め、人流にかかわるデータはこれまでアナログな方法での取得が多かったと思いますが、こういった小さなツールでもDXの役に立てるようになりつつあります。身の回りにある様々なデータをあらためて見直し、アナログ的なものなのか、現在のデータ取得方法をさらに進化させられないか、新しい技術で置き換えられないか、など、もう一度点検してみると新しいビジネスチャンスになる可能性が見つかるはずです。

ぜひトライしてみましょう。