日本版ライドシェア24年4月に開始 新しいビジネスはどんなところに見える? 118/100

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12月20日、一般ドライバーが2種免許なしで有償で顧客を送迎することができる「ライドシェア」が2024年4月にいろんな条件付きで「日本版ライドシェア」として利用できるようになると発表されました。
いったんは限定解禁をして、全面解禁の議論を続けて来年6月までに結論を出すことのようです。

令和5年12月20日デジタル行財政改革会議での決定内容によると、
2種免許取得取得に関する変更>
  ・第二種免許取得に係る教習について、2024 年4月以降できる限り早期から教習期間を大幅に短縮していく。
  ・また、タクシードライバーに課せられている法定研修の期間要件(10 日)を撤廃して大幅短縮。
  ・さらに、一定の地域においてドライバーに課されている地理試験について2023 年度中に廃止。
  ・外国人のドライバー向けに第二種免許試験を 20 言語に多言語化して実施する。
  ・合わせて、違法な白タクの取締りを強化する。

アプリを使ったライドシェアの仕組みを導入することで「地理的な知識は不要」、事前に目的地も運賃も確定しているので「言語的な対応も不要」という判断をタクシー乗務員にも適用できるようになるというわけですね。

普通免許一種で自家用有償輸送はできるようにはなるが、それでもタクシー車両は2種免じゃないとダメ。でも、乗務員不足解消のためには外国人も含めて簡単に2種免がとれるようにしようという配慮ですね。自動車教習所の業界としては、ひとりあたりの教習料(20~30万円)の単価は落ちるが、受講者は増えるかも。。というような複雑な気持ちじゃないでしょうか。

ここで考えられる新規事業としては、2種免試験のための教習本の20言語版の翻訳があり得ますね。いじわる問題が多いですから、文脈が読み取れるような翻訳をしてあげないといけません(笑)
さらに日本人の乗務員がどんなお作法でお客様に接しているかの動画教習などのオンラインレッスンのようなものもあると喜ばれることでしょう。

さらに、よく空港でワンボックスカーやハイエースのような大型車で乗り付けて、スーツケースを抱えた外国人観光客を乗せて市内ホテルなどに向かう姿を見かけますが、あれも白タク行為と言われていますが、それを取り締まるということでしょうね。ただし、海外の予約サイトで申し込んで決済も済んでいるということもあり、目の前で白タク行為を行っているとは認定できないため、規制しにくいとも言われて問題視されています。空港の送迎をライドシェアの対象とできるのであれば、タクシー会社としては今まで白タクにとられていた需要を取り返せるかもしれません。

<地域の自家用車や一般ドライバーを活かしたライドシェアの導入>
  ・タクシー事業者の運行管理の下での新たな仕組みを創設する。

ここは世間の評判が悪いところですが、完全にライドシェアという業界を認めるのではなく、タクシー会社のコントロール下で自家用有償運送を実施するという「様子見」的な決定です。このあたりは実際にライドシェアを使ったことがある人とない人で意見が分かれるところですね。

  ・タクシー事業者が運送主体となり、自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の
   収受が可能な運送サービスを 2024 年4月から提供する

  ・都市部を含め、タクシーの配車アプリにより客観指標化されたデータに基づき、タクシーが不足する地域
   ・時期・時間帯の特定を行う。  

  ・交通空白地に夜間など時間帯の概念を取り込み拡大する。

普通免許一種でも有償運送ができる前提としては「運賃メーターのない自家用車」でも代金収受ができて、間違いなく目的地に送り届けるというタクシーと同じサービスが提供できる必要があるのですが、それはアプリでできてしまう時代です。ただ、いまのところはタクシーがなりわいとしているところにはまだ入ってこないでね、という区分けをタクシーアプリの実績をもとにすみわけしようという試みです。でも、客観的なデータはありますが、「不足しているか否か」については主観的に決められるのではないか?と心配します。

  ・地域公共交通会議等における協議において地方自治体の長が判断できるよう制度の改善を図る。

全国一律ではなく、地域に権限をゆだねるようですね。地域差ができそうです。

  ・ドライバーの働き方については、安全の確保を前提に、雇用契約に限らずに検討を進める。
  ・自家用有償旅客運送を運送の実施主体からの受託により株式会社が参画できることを明確化する。

普通免許一種ドライバーとの新しい契約のあり方と歩合をどうするかを決めることになります。マイカー持ち込みで普通免許一種のドライバーとタクシー車両貸与の2種免ドライバーが共存することになりますが、はたしてどちらが得になるのでしょうか?単純な歩合の料率での比較ではなく、タクシーが不足する短時間しか営業できないマイカードライバーはそれなりにもうからないと続けられませんので、微妙なせめぎあいになることでしょう。

  ・対価の目安の引き上げ(タクシー運賃の約8割)やダイナミックプライシングの導入等を実施する。

海外のライドシェアの価格弾力性が高いというメリットを今回の取り組みにおいて無視するわけにはいかないためにダイナミックプライシングを採用することになるのでしょう。

  ・道路運送法の許可又は登録の対象外の運送(無償運送)について、アプリを通じたドライバーへの謝礼の支払いが認められる。

これは今、地域において旅館やホテルの送迎とかで困っている方が多いようです。
今までは旅館でタクシーを呼べば、最寄りの駅まで送ってもらえていたのですが、「タクシー乗務員不足でタクシーを呼んでも来ない」状態でお客様が列車に間に合わないとかのトラブルが増えているそうです。仕方ないので旅館の従業員がやむなく送っていくのですが、当然報酬はもらえません。せめて「有償」でいけるならば、非番のスタッフに送ってもらうとかできるのになぁと、嘆きを聞きます。

ここでの新規事業は今回のライドシェアでなくても、複数の旅館・ホテルと契約して、宿から駅までの送迎を代行するビジネスが成り立つようになる可能性を感じます。ライドシェアをマイカーで受けて一回ごとのフィーをいただくより、各社から固定のフィーをいただき、乗り合いで送迎したほうが安定するかもしれません。それ専用のアプリがあればできるということならばそんなアプリを作りましょう(笑)

上記の方策について、できるものから早期に開始し、実施効果を検証するとともに、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024 年6月に向けて議論を進めていく。

ということですが、「タクシー会社が運行管理を行う」というのが今回の改正のポイントですね。
安全確保のためタクシー会社がドライバーへの教育や車両整備の管理、事故時の責任を負う。タクシー専用車両を一定台数以上保有していれば、一般ドライバーの自家用車を活用できる

令和5年12月20日デジタル行財政改革会議の資料より

どうもタクシー会社が悪者扱いされがちなのですが、タクシー会社は「緑タク」として実に細かいところまで結構ガチガチに安全配慮を行う義務を課せられている規制業種なのです。
 (1) 運転者は二種免許必須。(自動車教習所で約20~30万円)
 (2) 過労運転防止のため運転者の拘束時間や休息期間(勤務と勤務の間隔)が規制
 (3)乗務前のリアルでの点呼、アルコールチェックが義務付け
 (4)兼業・アルバイト禁止
 (5) タクシーの車両は、自家用車より厳しい車検、定期点検、清潔の保持・消毒などが義務付け
  (高額で厳格な点検の必要なタクシーメーター)
 (6) 事故対応向けの事業用保険に加入が義務付け
などなど、それなりの品質基準を満たすために大きなコストをかけてきました。

「タクシー会社は事故を起こさないようにこれだけのことをやっている。」「素人の運転する白タクでは安全が守れない」と言い続け、ライドシェアを排除してきたものの、今回はその安全管理をタクシー会社に負わせるというなかなか厳しい条件で解禁へと一歩進めることになります。
日本版ライドシェアにおいてはどこまで厳格にこれまでの品質管理を求めていくのでしょうか?

新規ビジネスのポイントとしては、
●点呼アプリ・・・1日に数時間しか勤務しないにもかかわらず、タクシー会社の事務所(大体不便な場所にあります)に立ち寄ってからでないと乗務ができないのは非効率ですから、オンラインで点呼とアルコールチェックができるアプリと機械があれば、できちゃいますね。
※現在は自社でリアルでやることがマストですから、ドライバーの出庫や帰庫の点呼が各社の負担になっています。資本関係のない複数のタクシー会社で点呼をまとめて代行することもできません。
●教育代行・・・・タクシー会社の大半は小規模会社です。各社一律に教育係を設置して普通免許一種ドライバーを教育させるだけの余裕も人材もいません。地域ごとに教育窓口を集約して、各社から受託していく仕組みを作っていくことをお勧めします。

ライドシェアがタクシー会社の市場に与えるダメージは間違いなく大きいと思います。そしてね国としてはそのダメージを抑えつつ、ソフトランディングを目指しているようですが、タクシー会社の規模にかかわらず何もかもタクシー会社の責任でライドシェアをやっていくのはいささか無理を感じます。
ただそこに新しいビジネスの芽があるということも事実。

  ・自家用有償旅客運送を運送の実施主体からの受託により株式会社が参画できることを明確化する。

個人のドライバーだけでなく、新しい姿のライドシェア会社が生まれる可能性もあるのでしょうね。