ガソリンスタンドは次世代モビリティーのハブスポットへと進化できないか? 122/100

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最近、ガソリンスタンドがある場所とない場所が極端になっていると思いませんか?
ガソリンを早く入れたいときに限ってまわりに見つからない。でも、ガソリンスタンドがあるロードサイドエリアには集中して何軒ものお店が集まって価格競争をガンガンやっている。一方でガソリンスタンドの跡地がそのままになっているところも目立つようになりましたよね。なんだか、業界が大きく変わってきているようです。

調べてみますと、ガソリンスタンドは ハイブリッド車や電気自動車の普及によるガソリン需要の減少や、経営者の高齢化や後継者不足などで減少が続いているということで、全国のガソリンスタンド数は1994年度の約6万店をピークに減少しており、2022年度末には2万7,963店と半減し、今後もさらに減り続ける見込みとのこと。ガソリンスタンド大手のENEOSは脱炭素、電気自動車(EV)化により「2040年には国内のガソリン需要が2019年比で半減する」と予測している。という流れになっています。

これだけの数のガソリンスタンドがなくなっていくということは、跡地利用も活発化しているかと思うとそうでもないようです。ロードサイドのレストランやコンビニの跡地活用は状態が良ければそのまま居抜きで別の店舗にできたりするのでしょうが、ガソリンスタンドはそううまくはいかない物件のようです。

危険物であるガソリンを取り扱う場所ということで、跡地も事故が発生しないように地下貯蔵タンクの点検整備が必要だったり、土壌汚染が発生しないように措置を講じたりする必要があるため、そのまま放置するのも手間やコストがかかる。しかも、頑丈な建屋に大きな屋根、地下にはガソリンタンクがあるという、解体が面倒な設備に加えて、安全にとても気をつけて作業しなければいけないためにガソリンスタンドの解体工事は非常に難易度が高く、汚染物質の有無などによって費用も相当高くつく可能性があるためにリスクが多い物件となってしまうのです。ガソリンを入れていた地下のタンクを撤去するとなると数千万円かかる場合があるというのもネックのようです。そんなこともあり、お金をかけず再利用する場合には地下のタンクを撤去せず、中に水や砂を詰め込んだうえでコンクリートを流し込んで、そのまま地中に埋め込んでしまうという方法を選ぶ場合が多いようなのですが、埋めたままのタンクの上には新たに建物は建てられないというなかなか面倒な物件と認識されているようです。

そんなガソリンスタンド跡地ではありますが、立地としてはロードサイドで比較的広い物件も多く、車を停めるスペースも取れるという観点から、そのまま放置するにはもったいない。意外と訳あり物件なので地代・賃料も安くなりそう。ではどうやって活用すべきなのか?

アメリカを見てみますと、日本でもガソリンスタンドとコンビニが合体した店舗が目立つようになってきましたが、すでにEV車がメインになりつつあるアメリカではもっと進んでおり、ガソリンスタンド専業は減少の一途で、コンビニがメイン事業となり、その取扱商品のうちの一つにガソリンがあるというように変わってきているようですね。セブンイレブンはアメリカでコンビニ併設型ガソリンスタンドをガンガン買収しているようです。

現在あるガソリンスタンドの生き残り策として、日本でも徐々にコンビニとのコラボ店舗が増えていく流れはできそうです。では、撤退した後の店舗になにか活用の道はないものか?地下タンクを撤去すれば通常の土地として利用できるので、今回の前提としては、地下タンクを撤去せずにそのままの状態で再利用するケースでの活用となりますね。

すでにある再利用事例としては、
・カフェ、飲食店
・携帯ショップ
・機械工具やクリーニング、コインランドリー等のFCショップ
等があるようです。これらはすでにある事務所や整備スペースなどはそのままにして再利用して別の業態の店舗として活用している事例ですね。

ということで、
・ロードサイド立地
・平地のスペースがたくさんある
・メインの建物は解体せず
・ガス・水道・電気はそのまま使える
・新しい建物が建てにくい
みたいな条件のもと、せっかくなのでモビリティにかかわるような再利用の可能性を考えてみましょう。

1.モバイルな店舗で考える
既存の事務所・整備スペースを飲食店や別業態にすることはできますが、もっと増やしたいならば、地下にタンクがあるので新たな建屋は建てられないので移動可能な店舗=モバイル店舗をセットすることにより、店舗を増設できる。コンテナやトレーラーハウスのようなしっかりとした作りではあるが基礎工事とかがあまりいらない店舗は活用可能です。これらの店舗は需要に応じて後からでも追加しやすいし、レイアウトもフレキシブルに考えられるのがメリット。飲食店や雑貨店は当然ですが、最近では宿泊施設として活用している事例もあります。

2.モバイルだけで考える
固定的な店舗の概念を捨て、キッチンカーや移動販売車の集積地として常に出店店舗の数や業態を変化させながら年中イベントのようなスペースとして利用する。電気も水道もトイレもあるから移動販売をする人たちにとっても良い環境でお店を運営できるのがメリットです。移動販売車の月ぎめ駐車場として提供することも考えられます。さらに周辺でイベントをやっているときには、キッチンカー部隊がそこから出動なんてこともできますよね。動ける店舗のメリットを活かしましょう。

3.ドライブ旅行のポータルとして考える
ガソリンの需要が減少したとしても、EV化することにより、自動車自体の需要はなくなりません。自動運転化したとしても移動はなくなりません。となりますと、EV充電のステーションとしての役割は当然必要。充電時間中には飲食需要も生まれるでしょうし、観光立地であれば車を置いたまま、バイクや自転車等のレンタルなどもあるかもしれません。コンテナを利用した宿泊施設にも十分な商機があると思います。充電する時間すら待てない人に向けてはレンタカーも必要なのかもしれません。
また、キャンピングカーで泊まれる場所が少ない日本ですから、飲食店やコンビニが付属していて、街中で宿泊できるスペースとしても人気が出ると思います。

1~3を組み合わせて考えると、繁閑、需給バランスに応じてとても柔軟な跡地利用ができるような気がします。従来は新しい商売をするにも、先に店舗を作り、人を集めてからのスタートでしたが、ガソリンスタンド跡地という制約の多い場所においてはすべてをモバイルといいますがムーバブル、移動可能という発想でサービスを構築することにより、短期間に新しい展開を生み出せるような気がします。

モビリティー社会の中核を担ってきたガソリンスタンドはその役割を終えつつありますが、その立地やスペースの広さを利用することにより、次世代のEVモビリティーのハブとしてさまざまな機能をフレキシブルに提案できる場として復活できる可能性を感じています。