泊食分離の流れが加速、そして夜!夕食難民がゾンビのように街に出る(笑) 121/100

新規事業100

インバウンドの回復と共に外国人がたくさん来るようになったあるスキーリゾートのホテルの話を聞く機会がありました。これまでは日本人観光客、スキー客メインだったので宿泊は週末のみ、日帰りも多くて館内消費額が少ない、レンタル用品のニーズもない。これでは人を雇ったとしても効率よく回せないし、平日の需要を高める手立てがなかったと、これまでのご苦労や課題をはじめに聞かせていただきました。しかし、この冬はオーストラリアからのスキー客、ファミリーでにぎわっている。前年実績をはるかに超えてにぎわっているというとってもいいお話。
その中でとくに印象に残ったのは、長期滞在宿泊者のもたらす経営メリットの話。
なにがすごいというと、欧米系の宿泊者は1週間、2週間、場合によっては1ヵ月の長期滞在者が多いので、以下のようなメリットが実感できるということなのです。

 ●土日とかに限らず、平日稼働を高めてくれる・・・客室は無駄なく埋まるし、スタッフも効率よく回せる
 ●長期滞在がほとんど・・・毎日チェックインするわけではないのでチェックイン/アウトの行列が減る。清掃も毎日は必要ないので、清掃スタッフも少なく済み、当然コストも下がる
 ●館内消費額が増える・・・ずっといるのでランチ需要も売り上げにつながる、初心者で用具を持っていないファミリーが1週間まるまるスキーレンタルしてくれる、おみやげの売上も上がる

いいことばかりのようです♪

つまり、
・宿泊客が土日に集中せず平日の稼働が上がる
・連泊のお客様が増える
このふたつの要因が人手不足も心配することなく、劇的に収支を改善している要因のようです。
コロナ禍では大変なご苦労をされたということでしたので、本当にいいお話として拝聴させていただきました。

残念ながらこれは一部のうまくいっているスキーリゾート系ホテルのお話。
これまで日本人を主要客としてきた観光地の宿泊施設ではそうはいきません。

コロナ禍からの回復とともに宿泊産業で起こっている最近よく聞く話。
中小の高齢経営者の宿ではコロナ禍で料理人が離職したり、自ら料理していた場合でも体力的に食事提供の手が回らなくなったりして夕食・朝食の提供をあきらめたところが多く、「泊食分離」が進んでいる。
ちょっと寂しいですね。

泊食分離にした宿泊施設としてはなんとか少ない人数で営業を維持することができ、目先の課題は解決するのでしょうが、食事の提供がない宿泊客がときとして夕食難民になってしまうこともあるのです。

例えばこんなケース。
若い方からすれば、宿泊予約サイト(OTA)の価格表示でチェックするポイントは価格ですから、価格の低い泊食分離の値段はとても魅力的です。そして、検索して出てきたリストの中から食事なしの最低価格で予約してお得感たっぷりで現地に向かう。
でも、現地に着いたら問題発生。
都市部とは違い、宿泊施設のまわりには飲食店が少なすぎる。しかも多くは18時で閉店。平日だと休業の店舗も多い。検索しても評価の高いお店も少ない。結果、夜遅くまで開いているお店が少ないので、やむを得ず駅の近くにあるコンビニを見つけてお弁当をカップ麺を部屋で食べる。
なんてことが起こっているところもあるようです。

冒頭の話のようにインバウンド客が多ければ、むしろ泊食分離のほうが経営効率も高まり、人手不足の課題も解決ではそうなのですが、日本人がメインだとまだまだそんなにうまくは回らないのでしょうね。

でもこのふたつの話を聞いていて、こんなことはできないかと思ったことがあります。

それは「泊食分離が進んでもエリア全体で支え合う仕組み」

●着眼点
 ①泊食分離した宿泊施設の宿泊者数分(A)の食事が必要
 ②一方で、これまで食事提供ができる宿泊施設は毎日宿泊者数分(B)の食事を提供してきたが、宿泊者数分以上の食事を提供できる能力(C)があるはず。
 簡単に言えば、(C)-(B)=(A)となれば夕食難民は防げるということ。

エリアの宿泊施設がお互いの能力を補完し合って、顧客満足度を高める取り組みの誕生です(笑)

●こんなしくみ
 ・泊食分離の宿泊施設の予約がはいる。
 ・宿泊予約完了後、食事についてのリクエストを訪ねる。
 ・エリア内で宿泊者以外にも食事提供できる宿泊施設のリストから食事を予約できる。
 シンプルに考えればこんな感じ。
 このしくみがあれば、泊食分離の宿泊施設はお客様の困った顔を見なくてもすみますし、食事提供能力の宿は宿泊客数以上の食事を提供することで売上が上がるし、コスト効率も高まる。
 このようなエリア限定の食事マッチングプラットフォームを提供できないものでしょうか?

 課題としては
 ・宿泊施設間の移動はどうするか?・・・人数がまとまれば送迎バスを出す
 ・当日予約はできるのか?・・・館内施設の料理屋やバー、ラーメン店などのデリバリーで対応する
 ・温泉街の飲食店からのデリバリーはできるのか?・・・エリア限定デリバリー部隊を作る、キッチンカー部隊を編成する。
 とか、いろいろとアイディアを出し合いながら仕組みづくりができるのではないでしょうか?

中小宿泊施設の高齢化やコロナ禍で行われた無利子無担保貸付返却問題など、ここから数年はかなり厳しい状況に立たされる経営者の方も多いと思われますので、地域での支え合いの仕組みをいろいろと考えなければいけませんよね。