AI×地域の観光のために必要な「 AIのエサ」 5/100

新規事業100

ここ20年ほどで携帯電話でインターネットが使えるようになり、その後のiPhone/スマートフォンの誕生により、通信技術の発展も伴いパソコン並みの情報取得や発信がモバイル環境で使えるようになりました。地図情報、写真、動画が扱えるのは当たり前、SNSの広がりにより、移動中・外出中の情報流通量が圧倒的に増えました。はじまりの情報発信者はビジネスサイドだったのですが、スマホ、SNSの普及により個人が発信の主体となりました。

そこで発生したのが情報の濃淡の地域格差問題。
管理されていない個人の情報発信は、質にも差がありますが、それ以上に量にも差があります。

たとえば「食べログ」
食べログのアクセス数(2021年9月現在)は総ページビュー: 14億3,164万PV/月、月間利用者数: 約9,985万人/月(内訳 PC:1,153万人 スマートフォン:8,831万人)となっています。
パッと見、全国民が毎日食べログを使っているように見えますが、アクティブユーザーの大半は首都圏・関西圏の住民で、お店の閲覧も書き込みの投稿も 首都圏・関西圏 のエリアばかり。ほぼ人口構成比と同じです。システム上は平等にできてますから47都道府県の情報が閲覧できるのですが、データ量的には圧倒的にたくさん人が住んでいる地域のものが蓄積されていきますし、更新頻度も高い。結果、同じ 「星3つ」 でも地域によって「星3つ」の価値や信頼度が違ったものになってしまうということです。

つまり、地域の情報は「薄い」し、「新しくない」というのが課題。
日頃食べログを活用しているユーザーが地域に旅行した時には、参考にしにくいというわけです。
「新宿」「ランチ」で検索すると何千件も出てくるのに対して、「地域名」「ランチ」では1ページ目には地元のお店が出ますが、2ページ目からは大手外食チェーンが出てくる。しかも、全体的にレビューが少ないし、古い、あまり上手ではない。地域に住んでいる人はともかく、旅ナカで検索している人にとっては求める答えではないということがよくあります。

AIによって観光データベースは整備され、旅ナカでは的確なタイミングで、的確な提案をスマホに投げ込んでくれて、満足度の高い旅行が実現すると思っていました。

でも困ったことに地域に行けは行くほど、AIに食わせるエサ(観光情報データ)が「少ない」「最新でない」。もっとも利用されている飲食情報のサイトでもこんな状況ですから、地域の観光スポットも入場施設も人が管理していない景観も位置情報、時間軸、キャパシティ、混雑状況など、あらゆる情報が日々、時々刻々と更新される状況にはないというわけです。
携帯電話からスマートフォンにシフトしたとき、モバイルで情報を取得しながら旅をすると無駄なく、無理なく、最適な情報をもとにたのしく旅行ができると夢を見ましたが、そのときから今に至るまで、この情報量格差の問題は解決されぬまま、AIの時代を前にしています。

AIができること、システムができることはどんどん進歩していますが、それを有効に機能させるには エサ(観光情報データ) が必要。本格的なAIの時代を迎えるまでにどんどん蓄積して更新していく仕組みを用意するべきです。今のところ、観光は観光行政・自治体。飲食・ショップは事業者任せ、口コミは利用者任せ。交通情報は国交省、鉄道会社。駐車場データはなし。それらは地域の課題ですが、自治体だけの責任でもなく、事業者だけでもない。旅行者も巻き込んで取り組むための仕組みを作らなくてはならないと思います。
今後、基本情報、それに付随するメタ情報を集め、口コミを含めた情報蓄積、情報アップデートができる組織が必ず必要となります。そして集まった情報は「地域の持続的な発展」のための社会インフラ情報として蓄積・更新され、多言語化され観光情報AIや自動運転車のエサとしてマネタイズできる事業となっていくことでしょう。

地域の情報収集はGoogleとて、利用者まかせですからなかなかうまく進んでいませんでしたが、ここにきてGoogle my businessのように事業者が主体的に情報を掲載することで営業情報・混雑情報・写真・口コミを集め始めています。食べログよりも先に表示されますし、みんなが利用する検索エンジンだけに地域情報まですべて握られてしまうのでしょうか?

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