ローカルガイド育成スペシャルチーム 32/100

新規事業100

以前から、国内の観光地には稼げるローカルガイドが存在していない、もしくはとても少ないことが地域の観光に地元の若者が従事していない一つの原因じゃないかと思っています。
さかのぼれば日本の観光産業が全国的に拡大したのは高度成長期(1965年前後)で、1964年の東京オリンピックをターゲットに東海道新幹線、名神高速道路、首都高速道路が開通し、鉄道、バスなどを利用して団体型の旅行が一気に広がりました。それに合わせて、伊豆、箱根、熱海等の温泉街もでき、観光施設もできたことで、日本の観光の基礎ができたといえます。

考えてみるとそこで花形の職業であった「バスガイド」さんが生まれてしまったことがローカルのガイドさんのプロ化を阻害してしまったのかも。
かつてもバスガイドは旅行の出発地から道中の案内、観光地の案内まですべての行程の名所の解説、道中の建物やトピックスまでカバーしてお話してくれました。
観光地についたらいち早く下車して、駐車場の誘導を行い、再集合時間を案内し、お客さんを連れて観光地を案内して、バスに戻る。ドライバーさんとルート確認を行い、間違いなく道中の案内をすすめる。よくよく考えればスーパーマンでしたよね~。
毎日毎日、いろいろなツアーに乗務するわけですから、観光ルートに合わせて分厚い教本をしっかり覚えたうえで案内を行うのは本当にすごい努力が見えないところにあったわけです。今更ながら感謝です。

そんなバスガイドさんの姿も最近ではめっきり減ってしまい、バブル期前後からバス車中でのカラオケやビデオ視聴の時間がどんどん増えた結果、今ではガイドさんは少なめの案内で、あとはお客さんそれぞれにスマホで楽しむというカタチにすっかり変わりました。(でも東北とかの観光バスに乗るとまだまだお話中心のガイドさんが頑張ってらっしゃいます。)

で、話は戻りますが、そのスーパーマン的なバスガイドさんがいたので、観光地にはローカルガイドさんという存在が不要だった。ローカルガイドで稼ごうにもニーズがなかったんですね。
その後、バスガイドさんがバブル期を境にすべてをまかなわなくなったときにローカルガイドのニーズが顕在化しましたが、旅行会社もお客さんももともとガイドにお金を払ったことがなかったので、やむを得ず自治体の支援のもと、観光ボランティアガイドという仕組みがアフターバブルから現在までにできあがったのではないか、というのが私の仮説です。

以前、観光ガイドのポータルがほしい 14/100 でも書いたのですが、観光ボランティアガイドの協会はおそらくそんな経緯もあって儲けるための組織でないこと、主に組織として活動している、そのお金は自治体から出ている等の事情もあって、観光ボランティアガイドに求められる要件はガイディングだけでなく、とても厳しいのが現実。
礼儀・身なり・活舌・案内説明の正確さ・時間の正確さ・健康や安全への配慮等、参加者が観光中に最大限満足していただくための配慮と正しい知識であり、それを毎週のように研修で身につけては実践する繰り返し。それだけでも普通の人ならいっぱいいっぱいだと思います。しかも基本無償。

そんな大変な仕事をボランティアでやっていただいているだけでもすごいのですが、それを個人のローカルガイドとして稼いでいこうとなるとますます大変。

ガイディングだけでなく、
商品となるツアーづくり
ツアーの案内原稿づくり
スケジュール作成
ホームページ作成、販売サイト登録
予約管理・顧客対応
宣伝告知
などなど、個人のガイドなのですが、やることはツアー会社並みです。

それをひとりでやるのは限界。
あたりまえですよね。
全国・全世界から来られるお客さんに地域のすばらしさ、面白さを案内することが目的で、案内することにいくら時間をかけても構わないでしょうが、それ以外の経営面とか管理面、宣伝告知はドシロウトだし、面倒。なんとか代わりにやってほしいと思うことでしょう。
また、一番やりたいガイドの仕事もいざやってみると、知識もしゃべりも自信はあるものの、もうひとつうまく伝わっていなかったり、受けなかかったり、リピーターができなかったり、悩みが募っていきます。客観的にみてなにが問題なのか教えてほしい。

できれば地域で稼げるローカルガイドを育成していくのであれば、
・販売・予約管理が得意な人
・SNSを活用した情報発信が得意な人
・写真・動画が得意な人
・ガイドツアーを盛り上げる演出家
などのプロがローカルガイドを支えていくスペシャルチームがほしい。
逆に言えば、こういう人たちが集まってでもコスト的に成り立つ体制にしなければ「稼げるローカルガイド」は一部のスーパーマンにしかできない商売になってしまうでしょう。

ローカルガイドの役割は、地域の持続性のために来訪者との関係性を高めなければならないという課題を前にして、地域に来られた人たちとの一番初めの接点であり、かつ長時間直接コミュニケーションがとれる地域のゲートウェイとなる大切な存在になりますから、若い人が都会に出なくても食っていける新しい仕事として確立してほしいと切に願います。

※新規事業100のカテゴリーは、私の思いつく観光系新規事業を日々書き留める場所。
 一緒にやれそうなときはぜひ声をかけてください。
 100までやります♪