イベントを引き延ばして通年観光へ 39/100

新規事業100

最近「イベント観光から通年観光へ」という言葉をよく耳にします。

単発のイベントは、労多く実入り少なし。
売り上げは上がっても一時的。短期間なので雇用も発生しにくい。祭り・コンサート等のイベントではオーバーツーリズム気味。結果、経済効果は低いのではないか。と言われてしまいます。

一方、通年観光によって安定した観光客を獲得できると労働需要の増加によりこれまで流出していた地域の若年層に仕事が発生し、域外への流出が抑制される可能性がある。そして通年で観光客が訪れることにより正規雇用の割合が増加し、質の高い観光サービスが提供される。それによってリピーターや新たな観光客の獲得によって人流の増加、関係人口の増加が期待される。という理屈。

なんとなく理屈はわかりますが、ずっとイベントで食ってきたのもその地域、それが染みついているから急に通年観光といわれても困りますというのが現状かと。

年間52回の土日、祝日16日で計120日の休日。お盆とお正月で約10日として合計130日で一年間食っているといわれる観光業界なのですが、これまではそれでも大型設備に大型バスを使って大量の団体客を受け入れることで、現場を回して食いつないできました。平日はいかにコストを抑えるか、もしくはすごく安く売ってでも稼働率を高めるか、等の工夫で利益よりキャッシュフローの獲得を目指していました。

アフターコロナの時代は密を避け、リスクを抑えながら、少人数で旅行をするという需要に応えなければならないと思います。泊食分離も進みます。連泊も増えつつあります。
となりますと、たしかに一過性のイベントでは、イベントの翌日はやることがないし、イベント以外に楽しむ選択肢も少ない。だったらそこに長居をしても仕方ない、という流れになってしまいそうですね。

「イベントを引き延ばして通年観光へ」という聞こえはいいのですが、一年中お祭りをしているわけにはいかないですし、巻き込む人も多すぎます。急に通年といわれても困ってしまいますよね。

発想としては、「今のイベントをイベントの時期でなくても楽しめるようにする」ということなのですが、お祭りの通年展示としては、ねぶたの博物館「ねぶたの家 ワ・ラッセ」、唐津くんち曳山展示場とか、いつでも祭りの雰囲気が楽しめる場所があります。ただ、このケースは、お祭りはやはり年に一度。やっていないときに見学するというものです。
そうではなく、今のイベントのコアなところを抜き出して一年中楽しめるようにするという発想。

たとえば、アーティストの世界ではすでにいらっしゃるようですが、こどもの日の定番である「こいのぼり」を通年楽しめるように「夏のこいのぼり」とか「クリスマスのこいのぼり」とかを提案している人もいます。こいのぼりという行事ではなく、こいのぼりのカタチをアートとしてとらえ、自由な発想でイベントに関係なく展開していくというわけです。
そうするとこれまでとは全く違ったこいのぼりアートを楽しむ人を集められるのでは。

ひな祭りのイベントはそれに近づいている一つかもしれないと思っています。
ひな祭りは3月3日の桃の節句。
ひなあられの発売はバレンタインデーが終わったらすぐに開始。
雛人形は節分を過ぎた立春(2月4日)ころに飾り始めて3月3日にお片付け。
ひな祭りは旧暦の3月3日までという地域もあって4月8日まで延長するところもあり。
雛人形ではなく、吊るし雛を飾る風習の伊豆から相模の地域では、1月下旬から「吊るし飾り」という名前で展開。発祥の地といわれる稲取温泉では「雛のつるし飾りまつり」を令和4年1月20日~3月31日まで開催中。なんと2か月半。1年の1/4近い。
吊るし「雛」という言葉を使わず、吊るし「飾り」として限定感をはずしたら、3/3ではなく、かわいくてあでやかな「春」の行事になったわけですね。しかも吊るし飾りのデザインは「厄除け」「子どもの成長」等の意味合いをのせられれば無限大の広がり。
先日稲取に行ったときに聞きましたが、地元の旅館の女将や主婦が20年以上をかけてここまでの規模のイベントにしてきたそうです。今ではひとつ1000円から3000円くらいの額で販売できることもあり、結構いい仕事になっているようですね。結果、地元の主婦は一年中吊るし飾りを作っているようです。これもひとつの通年化かもしれませんね。

イベントが広がり、長期化することにより、マネタイズポイントができてくる。
だから、通年の仕事になる。。。
とてもいいヒントになりますね。
地元のお祭りやイベントのアートな部分や民芸・工芸要素をもう一度見直し、イベント時期以外にもアートとして、作品として、通年展開できるものはないか?見直してみるのもいいのではないでしょうか?

観光以外でいえば、年賀状ソフトの「筆王」が最近「オールシーズン筆王」として通年で使えるバージョンを売り出し中。
どの業界も一発屋だけでは食っていけないようです。

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