農産物で活性化、どうする?その1 73/100

新規事業100

いろいろな地域の方と話をしていますが、農業問題はますます深刻なようです。
農業人口の6割が65歳以上であり、農家の平均年齢はなんと68.5歳。35歳未満の働き盛りはわずか5%というのが現実。そのため年々離農する人が増え、作物の栽培が客観的に不可能となっている「荒廃農地」が増えています。そして、住宅地域と山の境界線に合った農地が荒れてしまうことにより、イノシシやサルが身を隠せる場所がどんどん住宅地域に近づくことで畑を荒らしたり、街中に出没したりするような被害が広がるという悪循環が発生しているそうです。

地域おこし協力隊が浸透する中で、若年層の就農が増えているというものの、まだまだごく一部のようです。自然との闘いですから、収入が不安定だということが定着しない要因の一つですが、もう少し「稼げる仕事」にならないと都会を離れて農業をやる人は増えにくいのでしょうね。

そんな中、先日小田原で農家を目指して修行中の23歳の女性の方の話を聞きました。
まだ知名度の低い小田原のレモンをプロモーションして稼げる農業にしたいというお話でした。
小田原は古くから柑橘類の栽培に適しているということで、冬場はミカン類が主力の産品となっていますが、こちらも毎年耕作地が減少の一途となっているそうで、なんとかそれを食い止めて稼げる農業として行き社会課題の解決に貢献したいとのこと。本当にえらいですよねぇ。
そして、彼女なりに研究、勉強を重ね、栽培効率や鳥獣被害などのリスクを勘案し、マネタイズしやすい作物として選んだのが「レモン」ということでした。尊敬します!

なんだかいいところをついてるなぁと感じてしまいましたので、
ここでは、ではどうやってレモンを売るか?を勝手に考えてみたいと思います。

まずは、農家・農園という場を利用した売り出し方を観光目線で考えてみます。

<観光農園/農業体験>
○メリット
 好き嫌いの多いこどもでも観光農園や農業体験等で、野菜や果実に触れたり、鮮度の高いものをその場で食べたりするととたんに好きになることがよくあります。観光農園は生産農家のファンづくりにはとても効果が高いし、気に入ってもらえれば通販で継続購入していただける可能性があります。
生産者が直接消費者に販売できる機会のため、流通コストが省けるし、中間マージンも発生しないので収益率が高い。
●デメリット
 野菜、果物は収穫時期が限られているために、年間を通じて来園してもらえない。しかも収穫時期は農家にとって繁忙期なので来園客対応に人手が割けない。ミカン狩り、いちご狩りで食べ放題専業にするところも増えつつありますが、通年とはいかない。食べ放題でお客さん任せにしてしまうと「おいしい、まずい」にバラツキが出るため、評価が不安定になってしまう。収穫体験といっても、単純に「もぎるだけ」のものが多く、すぐに終わってしまう。

<農家レストラン>
○メリット
 産地の近くで鮮度の高い作物を生かした手作り感たっぷりのお料理をふるまうことで人気。農家レスト人、農家食堂という言葉だけでもおいしく感じるくらい、マーケティング的、地域ブランディング的にはメリットが多い。そのため地元向けの価格ではなく、観光向けの価格設定でも受け入れられるので利益率は高い。地域産品の魅力がダイレクトに伝えられるため、直売所を併設することで相乗効果が得られる。
●デメリット
 初期コストがかかるため、生産農家単独ではスタートしにくいし、兼業では運営できない。はじめからそれなりの組織がなければ成り立ちにくい。規模が大きくなるにつれ、近所の主婦の集まりだけではコントロールしづらくなる。メニュー、味に特徴が出せないと、ファミレスと比較されてしまい、優位性を保てなくなる。

「産地」を見せる、知らせることで、産品のすばらしさをダイレクトに消費者に訴求できるという点においてはどちらもとてもわかりやすい方法だと思います。
特にレモンの収穫時期は秋ごろのグリーンレモンからはじまり、翌年の春すぎまで半年以上あるということで、観光農園をするには比較的向いているかもしれません。

ただ、「レモン」となるとそのままかぶりついて「おいし~い」というシーンは想定できないので、農園についてから「何をしてもらうか」「どうやっておいしさを伝えるか」のストーリーをしっかり考えておかないと「すっぱ~い」だけで終わってしまうパターンなりかねません。
さらにいえば、「レモンとお料理」という組み合わせもピンとはきません。

「レモン」は必要な時にひとつだけ買ったり、レモン果汁で代用したりするため、普段から大量消費するものではないというイメージが強いので、もし産地もしくは産地に近いところでその魅力を伝えたいのならば、その場でこれまでの常識的な使い方や楽しみ方を超えるような「一番おいしく楽しむシーン」までを提案しなければファンにはなっていただけないのでは、と思います。

ということで、レモンの観光プロモーションでまず大事なのは、
・国産レモンのすばらしさ
・そのすばらしさを感じるための一番よい食べ方・飲み方の提案
・小田原で生産することで消費者が感じるメリット
これらを直感的に伝えられるか?ですね。

つづく。

※新規事業100のカテゴリーは、私の思いつく観光系新規事業を日々書き留める場所。
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