昭和レトロと昭和のまんまの違い

アイディアメモ

私は昭和37年生まれ。
昨今の昭和レトロブームでたびたび昔の映像や復刻版の昭和の姿を見るにつけ、昭和のど真ん中世代としては「自分たちの日常を非日常として楽しまれてしまう」時代が来てしまったんだなぁという複雑な心境です。それでも映像などで紹介された昭和のものを見ると当時の家庭の音とか、人の声とか、においとか、夕焼けの色とかが瞬間的にフラッシュバックされる感じがあり、記憶のかなたにあったものがふと呼び起こされるキッカケになります。もっともいい思い出ばかりじゃないので、かなり余分な記憶まで引っ張ってこられてしまうのでタチが悪いのですが。。。(笑)

今回のブームは15〜24歳のZ世代から火がついています。
象徴的なイメージとしては、「純喫茶」でメロンソーダの上にアイスを載せた「クリームソーダ」。
「知らないはずなのになつかしい」という感じがこの世代にとって新しい感覚というわけです。それらをひっくるめて「エモい」といえばみんなにわかるようです(笑)

観光目線での成功事例としては、テーマパーク型。
テーマパークとして昭和レトロをうまくつかんでいるのは2021年にリニューアルされた「西武園ゆうえんち」ですね。街には昭和の懐メロが流れ、『三丁目の夕日』を彷彿とさせる昭和の世界が繰り広げられ、喫茶店や駄菓子屋さんなどで飲食の体験もできるテーマパークとして大人気です。
もっとさかのぼると「新横浜ラーメン博物館」も昭和レトロのデザインを取り込んだラーメンのテーマパークとして、長く愛されています。そして、若い人たちが集まっているのが東京お台場の「台場一丁目商店街」。20年ほど前にできた時には中高年層をターゲットにしていたのが、今ではZ世代に大人気。ここでは昭和の屋台街的な演出で買い物やゲームが楽しめます。いずれも映えスポットとして人気ですね。

昭和を前面に打ち出した観光スポットとして有名なのが大分県豊後高田の昭和の町。約20年にわたり、昭和の町として商店街をまるごと整備し、ボンネットバスを走らせ、昭和のものや乗り物等を集めたレトロ博物館的な「昭和ロマン蔵」を組み合わせて町全体で昭和の演出をして成功しています。他にも岩手県花巻市の山の駅 昭和の学校や岐阜県高山市の高山昭和館等の昭和を集めた展示系もありますね。もともと「昭和のまんま」の地域においては近所の蔵をいろいろ探るだけで「昭和の埋蔵品」はどんどん出てくるはずですから、きっと展示物には困らないことでしょう(笑)

ならば、「昭和のまんま」の地域は黙っていても若い人たちが集まってきてもおかしくはないのですが、そうはいっていません。
ブームを楽しんでいるZ世代のみなさんが求めているものは、「古くさい」ものではなく「逆に新しい」ものなのです。
 ・レトロかわいいもの
 ・レトロを体験できる
 ・一周回っておしゃれなデザイン
 ・持っていて楽しい復刻版 など
「映える」画像・映像を楽しみ、その絵の中に参加しながら、シェアしたくなるものがほしいのです。

私の新規事業ブログでも、地域こそ昭和部屋宿泊プラン 22/100 という記事を書きましたが、昭和のデザインのいいところだけ、つまり、「レトロかわいさ」は普遍的なものを持っていると思いますので、うまく取り入れることによってまだまだ旅館にはチャンスが残っていると思います。

SNSがきっかけで勝手にブームになっている事例もあります。
ハトヤホテルのエモすぎる空間が「昭和レトロ」とSNSで話題! (るるぶ&more.の記事)
伊東温泉のハトヤホテルの本館と別館をつなぐ渡り廊下はインスタ映えスポットとして人気。館内のシャンデリアやじゅうたんも昭和感がすごい、ハトヤのロゴのかわいい、ということで宿泊客の若年層比率も高まっているとのこと。でも、まわりでこんなに盛り上げてくれているにもかかわらず、ハトヤさんのホームページではそれを使って宣伝はしていない様子。せっかくなのにうまく乗ればいいのになぁと思っている次第です。ただ、そういうところに一喜一憂せず、やすやすとブームに乗らないところが息の長い商売をしている秘訣なのかもしれませんが。。。

ともあれ、昭和レトロのブームは新しい消費を生み出しているのも事実。
「昭和のまんま」では集客できなさそうなので、「地域の日常のなかにある非日常感」=「レトロかわいい」要素をうまく引き出し、昭和の楽しかった部分を体験してもらえる「逆に新しい」仕掛けを考えて集客に生かしてみてはどうでしょうか?