通年観光実現に向けた「日常の中のゲスト枠」という新商品の可能性 98/100

通年観光シリーズでは、いろいろな切り口からその実現に向けての可能性を探ってきました。
イベントを引き延ばして通年観光へ 39/100
通年観光=地域の日常を旅する新しいカタチ 58/100
通年観光=地域の日常を旅する新しいカタチ その2 62/100
地域の日常に都会のデザインを取り入れると新しい価値が生まれる 71/100
通年観光に必要なのは一年中「新しい」情報発信をすること 97/100

書きながらなんとなく見えてきたのは、
・「通年」というのはいつでもウエルカムな状態
・「いつでも」というのは非日常だけではなく、地域の日常に近いところまで見せること
・「日常に近い」とはいえ、観光のためにデザインする必要があること
・「デザイン」とは見た目のカッコよさもあるけど、新しさや斬新さに近いこと
・「新しさや斬新さ」を常に発信していくことで一年中ウエルカムな状態になること
みたいな循環です。

しかしながら、イベントやお祭り、コンサートのように「何月何日何時から」という具体的なお誘いがあると「行きたくなる明確な理由」か生まれるのですが、「一年中いつでもどうぞ」となると行くタイミングが見当たりません。
では、イベントとかではなく、「行きたくなる理由」はどうすればよいのかについて考えてみます。

旅行目的地を決める動機としては
・みたいモノがある
・食べたいものがある
・会いたい人がいる
・やりたいことがある
などがあるかと思いますが、そこで体験できることの選択肢が多ければ多いほど、選ばれる目的地に近づくでしょうし、一度や二度では体験しきれないとなるとリピート化する可能性もあると思います。
ディズニーランドに何度も行くのは、一日では回り切れないほどのアトラクションがあること、一年中小さなイベントが繰り返されていること、見る・参加するだけでなく、食べる・買うも充実していること、毎年のように新しいアトラクションが増えていくことなど、飽きさせない仕組みのオンパレードですよね。(そのかわり一日の消費額はものすごくなってしまいますが。。。)

有名な観光スポットだけに頼らず、町を楽しむためのたくさんの観光コンテンツがあればあるほど、来てもらえそうな気がするのですが、いきなり新しい観光スポットを作ることはできません。

そこでやってみたいと思うのは、「日常観光」。

人気の観光スポットや観光施設は観光客を多く集める集客装置・・・非日常
その次に地域を楽しむための仕掛けを地域の日常に近いところから作り出す・・・日常

地域の人が日常的にやっているとか、みんな知っているけど、外から来た人は知らないことを観光コンテンツに編集できないかと思っています。
まじめに拾うと生活習慣、料理、文化、歴史とかなってしまいますが、もっと日常に近づいて考えてみます。

・地域の人がおすすめの散歩道
・普段どんなお店でお酒を楽しんでいるか?
・地元の人たちが行っている人気のレストラン
・人柄で人気のあるカフェ店主
・地元の主婦に人気のスーパーマーケット
・普通の家族の晩ごはん
・趣味のサークル、ボランティア
・いつもやってるスポーツ
・空き物件紹介 

これらは、どちらかというと移住希望者が欲しがるような情報に近いと思いますが、外の人にはわからないことばかり。これらの情報を知るとそれを知った人たちはその地域が好きになるだろうし、少なくとも親近感が増す。しかも、地域の人たちの顔を思い出すし、会話を覚えている。
そんな体験を商品として組み立てられると「通年」どころか「二地域居住」、そして「移住促進」へとつなげられるのではないでしょうか?

これって「観光」というより「仲間に入れてもらう」というジャンルかもしれませんね。
「お客様」ではなく「ゲスト」。ともだちのともだち、くらいの距離感でお誘いができる。。。
だから、特別に場を用意するとかではなく、日常の中にゲスト枠を設定する感じで商品化するって感じです。

まとめると地域における「日常」の商品化=旅行者にとっての「非日常体験」とは、
・「通年」でやっていることを
・「いつでも」参加できるようにゲスト枠を作り、
・「日常に近い」仲間感覚を味わえるように
・「デザイン」された商品・サービスとして提供する。
・そして、「新しさや斬新さ」を感じる見せ方で情報発信していく。
ということでしょうか。

たとえば、これまで観光には縁がなかった「地元のプロ」との交流を商品化するならば、
・地元のシェフから地元の海産物を使ったアクアパッツァの作り方を教えてくれる
・タケノコを掘りに行って、そのタケノコを最高の状態で食べる方法を教えてもらう。
・地元の和菓子職人に弟子入りをする
・カフェでおいしいコーヒー豆の選び方から淹れ方までを学ぶ
・大自然の中でガーデニングのプロから庭づくりを教えてもらう
・毎週みんなで小屋づくりをしている場所がある
・高級車の洗車の仕方を教えてもらう
みたいなことも考えられます。

地域の中では人手が足りないとか、困っているので、外から人を募るみたいなことでもいいですね。
・みんなで古民家を解体する
・海岸のゴミ拾いをする
・みかん農家の収穫を手伝う
・お寺の大掃除をする
・藁ぶき屋根の架け替えをする
・保育園のクリスマスパーティの装飾を作る

無料とかごく少額のお金でできることとしては、
・ボランティアに参加する
・趣味のサークルに参加する
とか、これまで内輪でやっていた活動についても「ゲスト枠」を設定して、これもこの地域でできることとして全国に向けて発信していけば、やれることはもっと広がります。

できれば、ひとりのゲストでもふたりのゲストでも気兼ねなく、参加できると商品・サービスの幅は広がりますよね。

このような「日常」+「ゲスト枠」をたくさんリスト化して、地域の日常に参加する人を増やしていくことが究極の「通年観光」へとつながるものと考えます。

「通年観光」をキッカケにして、いつでもゲストを迎えるウエルカムな街づくりが生まれる。そこに新たな観光客を集めて、仲間を作り、つながっていく。
「日常」の中で生まれた「関係性」の高まりが「関係人口」を増やし、地域の持続可能性を高める新たな人口へとつながっていくというシナリオが完成します。

日常への参加が商品としてデザインできるかどうか、それをたくさん集めた時に商品群として認められるかどうか、本当に地域とつながる関係人口になっていくのか、いろいろと検証が必要かと思いますが、「持続可能な地域づくり」にとっては「一時的な観光人口の増加」以上に議論すべき提案かと思います。

※新規事業100のカテゴリーは、私の思いつく観光系新規事業を日々書き留める場所。
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